時・所:1600年末イタリアの修道院内
修道院の中庭、ある春の夕方。修道女たちの礼拝の合唱が聞こえる。礼拝が終わって全員が出て来ると、院長が礼拝に遅れた者や、いたずらをした者を叱り、やがて休憩の時間になる。アンジェリカは罪を悔いているとして許され、ルチッラは合唱の合間にふざけた罰として糸紡ぎをさせられ、オスミーナは礼拝中に真紅のバラを隠し持っていたというので叱責され部屋へ下がらされる。
全員が修道院のそれぞれ持ち場へ散り、各々の仕事を始める。ジェノヴィエッファが、聖水盤に太陽が黄金色に照り輝いているのを見て、これから奇跡が起こると騒ぐ。だが1年前にも同じようなことがあったとき、同僚の修道女が亡くなったのを思い出し、彼女たちは聖水盤を持ってその修道女の墓へ行って水を注ぐ。アンジェリカは願わくは生に花開くことであり、死の世界には花は開かない、死こそは美しい生であると歌う。修道女たちも口々に、望みは小羊を見ることだと天に語る。アンジェリカは問われて、望みはないわと答えるが、彼女たちは、アンジェリカが元貴族で、7年来音信不通の家族について知りたいと願っていることを語る。
そのとき医務係の修道女が、キアラが蜂に刺されて苦しんでいると駆け込んで来る。薬草に詳しいアンジェリカは、すぐさま草を摘んで調合し、手当の方法を医務係の修道女に教える。そこへ托鉢の修道女たちが帰って来て、ロバから次々と1日の恵みを下ろして皆に見せる。彼女たちが門の外に立派な馬車が止まっていたと話すと、アンジェリカは興奮してその馬車について訊ねる。やがて鐘が鳴り、各自が自分の面会人であってくれと願っているところへ院長が入って来て「アンジェリカ」と呼ぶ。ほかの修道女たちは、がっかりして泉の水を汲みに行く。院長は興奮気味のアンジェリカが静まるのを待って、伯母の公爵夫人の来訪を告げる。
談話室。不安のうちに待つアンジェリカ、そこへ黒服のいかにも貴族然とした公爵夫人が入室。アンジェリカが感動しているのに反して、夫人の態度は極度に冷ややかである。夫人は20年前にアンジェリカの両親が世を去ったとき託された遺産を、彼女の妹の結婚のため分割しなければならなくなり、相続を放棄するようサインを迫る。母の姉でありながら冷酷な方とアンジェリカは不満を洩らし、夫人は感情もあらわに怒り、アンジェリカに罪の償いを求める。7年も前にアンジェリカは、親の許さない子を生んだため、この修道院に入れられたのだった。7年間唯一心にかかっていた子供の消息を訊ねるアリア、「私の坊や」を歌う。夫人は静かに、子供は2年前に病で死んだと答える。アンジェリカは叫び声を上げて倒れ、そこへ泣き崩れる。やがて夫人は、アンジェリカのサインを受け取って帰って行く。
つづく
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