時と場所 インドミタブル号の艦上、1797年英仏戦争時のフランス海域近く
あらすじ
第1幕 プロローグ ヴィアの書斎
年老いた元軍艦長エドワード・フェアファックス・ヴィアが1797年の夏の英仏戦争時にインドミタブル(無敵)号で起こった出来事を回想するところから物語が始まる。「私は何をしてしまったのか」と自問自答する年老いたヴィアの顔に深く刻まれた苦悩が浮かび上がる。
シーン1 インドミタブル号の主甲板と第4甲板
水夫達が鞭をもった士官達に見張られ「天よ!」と呪文のように歌いながら、甲板を磨いている。すると新米水夫が誤って甲板長にぶつかったため鞭打ちの刑が言い渡される。新米水夫は必死に助けを求めるが、引きずられるように連行される。そこに商船ライツ・オー‘マン号(人権号)から来た三人の新しい補充兵が、憲兵曹長のジョン・クラッガート他三人の士官達と面接をする。最初の男、赤ひげは強制的な徴兵を非難するが、クラッガートは取り合おうとしない。次の男、アーサー・ジョーンズは全く精気の無い男であったが戦争時の人手不足に贅沢は言えないということで二人の兵役が決まる。最後の男、ビリー・バッドは逞しく、優しく、正直で、飛び抜けた美貌の青年だった。彼は捨て子で自分の年も知らないし、感情が高ぶると吃音になり話せなくなるが、面接官たちは大満足で採用を決める。ビリーは新しい世界への期待に胸を膨らませ、古い商船に別れを告げ「さようならライツ・オー’マン(人権)」と歌う。しかしこの歌を聞くや「千に一人の拾いものだ」とビリーを絶賛していた憲兵曹長クラッガートはビリーに船室に引き上げるよう命じる。ビリーの無邪気さがフランス革命後の人権思想に神経をとがらせる士官達を警戒させることになってしまったのだった。士官達からビリーを警戒するように忠告されたクラッガートは、衛兵伍長のスクィークにビリーを監視するよう言いつける。その頃、鞭打ちの刑を終えた新米水夫が、瀕死状態で船底の水夫部屋に担ぎ込まれる。心優しいビリーはひどく心配し水夫達とともに介抱する。古株の水兵ドナルドと老水夫ダンスカーは「正当な理由などあろうが無かろうが、遅かれ早かれ全員鞭打ちの禊を受けるのだ」と歌い、クラッカートがどんなに卑劣な男であるかをビリーに警告する。一方艦長のヴィアは人望厚く皆に敬われていた。若く一途なビリーは「星のように輝くヴィア」と艦長を称え、献身的愛情を捧げようと熱い思いを歌う。

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