第1幕
 騎士長邸の門前、時代は17世紀頃のスペインの町、従者のレポレロがぶつぶつ言いながらうろついている。ドン・ジョヴァンニが忍び込んで、ここの娘ドンナ・アンナを誘惑するのに、見張りに立っているのである。だが誘惑は失敗、おまけに騎士長に見つかり、決闘を申し込まれ、仕方なく老人を切り殺してしまう。アンナの恋人ドン・オッタヴィオが登場、彼は怒りを込めて復讐を誓う。
 場面は変わって夜明けの街道筋、ドン・ジョヴァンニとレポレロが話し合っていると、かつてのドン・ジョヴァンニの恋人エルヴィラが通りかかる。彼女は彼を憎みながらも、内心未練を捨て切れていない。偶然の再会に2人は驚くが、ドン・ジョヴァンニはその場をレポレロに預けて、さっさと逃げてしまう。そこでレポレロは彼女を慰め、有名な「カタログの歌」をうたう。
 セビーリャの小さな村では、可憐な村娘のツェルリーナと、お人好しだが嫉妬深い農夫のマゼットの結婚式が行なわれようとしている。ドン・ジョヴァンニ主従はそこへ現れ、早速ツェルリーナを誘惑しようと企む。ドン・ジョヴァンニは彼女に、花嫁にしてもいいというので、彼女の方も強く心を動揺させる。ところがエルヴィラが来合わせて、あの男のいうことを信じてはいけないと、彼女を連れ去ってしまう。
 次いでアンナとオッタヴィオが来合わせ、父が何者かに殺されたので、犯人探しに手を貸して欲しいと頼まれる。ドン・ジョヴァンニは適当にはぐらかしていると、またエルヴィラが現われ、彼の不実をなじるので、アンナは父を殺したのは、あの男かも知れないと疑い出す。再びドン・ジョヴァンニ主従が現われ、レポレロがツェルリーナとマゼットを家に連れて行ったからと報告すると、ドン・ジョヴァンニは「シャンペンの歌」をうたって、快楽の喜びを謳歌する。ドン・ジョヴァンニ邸の庭園では、ツェルリーナが誤解を解こうとして、マゼットに拗ねたり詫びたりしている。ここで彼女は「ぶって、ぶって、私のマゼット」をうたう。
 村人たちが集っているところへ、ドン・ジョヴァンニが召し使いたちを連れて現われ祝宴に招待する。小さなオーケストラが舞曲を奏で、宴会の雰囲気は大きく盛り上がる。仮面つけたオッヴィオ、アンナ、エルヴィラがあらわれ、ドン・ジョヴァンニの悪行を暴露しようと構えている。それとは知らずドン・ジョヴァンニは、ツェルリーナと踊りながら、誘惑しようと別室へ連れ込む。ところが間もなく鋭い女性の悲鳴が聞こえるので、一瞬その場は凍てついたように静まり、一同も固唾を呑んでみている。するとドン・ジョヴァンニが、レポレロを引っ立てて来て、この男がとんでもないことをしたのだというが、仮面の3人がそんな猿芝居にはだまされないぞと、こぞって非難を浴びせるので、ドン・ジョヴァンニ主従も彼らに対して身構える。
(C)出谷 啓
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