【あらすじ】
時と場所:1910年5月、アルプスの山ハンマーホーンの麓のブラックイーグル荘
第1幕「花嫁の帰還」ブラックイーグル荘
ハンマーホルンの麓に位置する宿屋ブラックイーグル荘には60歳になるヒルダ・マックという女性が住んでいた。ヒルダには40年前の婚礼前夜に、彼女の為にエーデルワイスを摘みに山に行ったきり戻らないマックという夫がいた。悲しみのあまり幻想の中で生きるヒルダは夫の声やメッセージを受けとるようになり、娘時代の衣装のまま夫の帰りを待ち続けていた。そんなブラックイーグル荘に毎年春になると著名な詩人グレゴール・ミッテンフォーファーが訪れ、ヒルダの幻想から作品作りのインスピレーションを受けるために逗留するのであった。ミッテンフォーファーはお供として秘書のキルヒッシュテッテン伯爵令嬢カロリーナ、若い愛人エリザベス・ツィンマーそしてお抱え医師のヴィルヘルム・ライシュマン博士を同行させていた。そしてこの春はライシュマンの一人息子トニーも大学の休暇を過ごそうとブラックイーグル荘を訪れていた。トニーが皆に自己紹をしてエリザベスと握手をかわした瞬間に、ヒルダは幻想を見る。そして「森や草原に咲く花々に雪が降る。何を隠さなくてはいけないの?」と歌い出す。ミッテンフォーファーは早速詩作のヒントを得ようと皆を退出させ二人きりになる。ヒルダはさらに「恋人達の足跡が雪の中に続く、何が二人の邪魔をするの?」と歌い続ける「春は悲しみに包まれ、山に向かう足跡はたどれない。二人の楽園はつかの間のあいだ雪の中に花を咲かせた・・・」と。この幻想がこれから起ころうとしている事件を予知していようとは、この時誰も気が付かなかった。数日が過ぎカロリーナは届いたばかりの雑誌に掲載されているミッテンフォーファーの最新作の批評に目を通す。すると自分のタイプミスで詩のユーモアが嫌味なヤジのようになってしまっていることに気が付き震え上る。案の定批評を呼んだミッテンフォーファーは激怒し、タイプ原稿を見せるよう命じる。そこでカロリーナはタイプミスがあったことを白状し「手書き原稿が読み難いもので」と言い訳をし、体調不良を訴えるが、それを聞いたミッテンフォーファーはますます怒りだし「君は馬のように丈夫なくせに!春の熱に浮かされているだけだ!」と罵る。カロリーナは泣きながら「もうこれ以上耐えられません!」と失神する。慌てたミッテンフォーファーは医者のヴィルヘルムを呼び、カロリーナは自室に引き取る。そこに山岳ガイドのマウアーがやって来て「ハンマーホーンから男の遺体が見つかりました。おそらく40年前に遭難したヒルダの夫マックのものでしょう」と告げる。皆はこの悲しい知らせをエリザベスからヒルダに伝えてもらおうと決める。エリザベスは思いやりに満ちた口調で「聞いてくださいヒルダさん。あなたは40年もここにいます」と話しかける。するとヒルダは「40年?私は昨日ここに来たのです」と答える。何とか説明しようとするエリザベスを退け、ヒルダは「愛より危険な愛がある。ここからお逃げなさい!危険が迫っています。緑の世界に行きなさい。お願いだから逃げてちょうだい!」と訴える。エリザベスは困惑しながらも「聞いてください、私の言うことを繰り返して下さい」と優しく話しかける。そして二人は二重唱で「私は結婚式の昨日ここに来ました。帰らない夫を待つ長い悲しみ。40年・・・月日は流れ、今日氷河の中に夫の遺体が発見されました。今日で待つのは終わりです。40年たって彼は今日帰ってきました。」と歌う。エリザベスの話に納得したヒルダは一人になりたいと告げる。
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