第2幕
 ガーター亭の内部。ファルスタッフがいつものように飲んでいると、バードルフとピストーラが、ご機嫌取りに戻って来るが、主人の機嫌は一向に直らない。するとクィックリー夫人がうやうやしくあらわれ、ばか丁寧に会釈して、アリーチェがあなた様の愛情に、応えたいと悩んでいるが、毎日2時から3時までは、旦那様もお留守なので危険はない。またメグも同じように悩んでいるが、嫉妬深い夫のためにご面会は難しかろうと、まことしやかに述べ立てる。大喜びのファルスタッフは、「行け、老練なジョン」とアリアで自らを元気付ける。するとフォンタナと名乗って、フォードが金袋をこれ見よがしに持ってあらわれ、自分はアリーチェ首ったけだが、貞操が堅くてなびかないので、まずあなたが彼女を陥落させてくれ。そうすると自分も口説きやすくなると、妙な頼みごとをする。ファルスタッフはお安い御用、もうデートは決まっていると請け合う。アリーチェたちのたくらみを知らないフォードは、妻が本当に浮気をしているのかと疑い、「夢かうつつか」と独白して、自分の間抜けさ加減を自嘲的にうたい、正装したファルスタッフについて出て行く。
 フォード家のサロン。アリーチェとメグがお喋りの最中、クィックリー夫人があらわれ、ファルスタッフが約束の時間に来ることを告げる。そこへ娘のナンネッタが、「お父さんが年寄りのカイウスと結婚させようとする…!」と訴えるが、アリーチェは優しく彼女を慰める。やがてファルスタッフがあらわれ、アリーチェに愛の告白をし、調子に乗って彼女を抱きしめようとする。そこへ打ち合わせどおりにクィックリー夫人が、メグが来たと飛び込んで来るが、続いてメグが大変、フォード氏が戻って来たと告げるので、慌ててアリーチェはファルスタッフを屏風の裏に隠す。フォードは子分を大勢連れて来て、間男を探せと大騒ぎになる。アリーチェは隙をみて、ファルスタッフを洗濯籠の中に入れる。屏風の蔭にはフェントンとナンネッタが隠れていて、熱烈なキスをしている。それを聞きつけたフォードは、子分に屏風を囲ませて捕えようとすると、若い2人は驚いて逃げ出す。怒ったフォードはフェントンを追い出し、夫人たちは召し使いに洗濯籠をテムズ河に捨てさせ、計略が巧く運んだと喜んで声を上げて笑う。
(C) 出谷 啓
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