時と場所:1874年オーストリアの温泉町バド・イッシュル
第1幕
序曲の後、ウィーンの豪華なアイゼンシュタイン邸内。夕暮れ時にロザリンデの4年前の恋人、アルフレードの歌う甘美なセレナードが聞こえて来る。そこへドアが開いて、手紙を手にした小間使いのアデーレが、ニコニコしながら入って来る。彼女は小間使いの仕事がいやでいやでたまらない。妹のイーダのように、将来は女優になるのを夢見ている。手紙はそのイーダからのもので、今夜オルロフスキー公爵邸で催される仮装舞踏会の招待状である。
アデーレが自分の身分を悲しんでいるところへ、ロザリンデが登場する。アデーレは、「奥様、私の叔母が病気なんです。今晩は見舞いに行きたいのですが。」と嘘をつく。しかし、ロザリンデは「だめよ、うちの主人は、5日間も刑務所に行くんだから。」とにべもない。
アデーレが泣く泣く部屋を出て行くと、庭からアルフレードが闖入して来る。驚いたロザリンデは「私は結婚してんのよ」と彼を一旦追い出す。そこへアイゼンシュタインが弁護士のブリントと口論しながら登場する。アイゼンシュタインは、知事に暴力をふるったため裁判にかけられ、ブリントの迷弁護のおかげで刑期が逆にのびてしまったからである。彼を待ち受けていたのは、「こうもり」とあだ名されるファルケ博士。博士はさっそくアイゼンシュタインに耳うちをする。今夜オルロフスキー公爵邸で仮装舞踏会があるが、刑務所へ行く前にどうかという。奥さんには内緒で、しかもルナール侯爵という偽名、酒と女と踊りは存分にということで、二人は手を取り合って、「トラ、ラ、ラ、ラー」と陽気に踊り出す。
部屋に入って来たロザリンデは、踊り歌う二人を見て仰天する。二人が退場すると彼女は先ほどのアルフレードの口説きを思い出し、アデーレに、叔母さんの見舞いに言って来たらと、鷹揚なところをみせる。
別室から着替えを済ませたアイゼンシュタインを見て、ロザリンデはびっくりする。刑務所に出頭するというのに、ホワイトタイに燕尾服という正装をしていたからである。そしてアデーレを含む三人は、それぞれの気持ちと内心の忸怩たる思いも込めて、別れの三重唱を歌う。
ロザリンデが一人でいるところへ、筋書き通りアルフレードがやって来る。彼は厚かましくも、アイゼンシュタインのナイトガウンを羽織り、ワインを飲みながら「酒の歌」を歌う。するとドアがノックされ、刑務所の所長のフランクが現れる。「ご主人をお迎えに」というわけで、アルフレードをアイゼンシュタインと勘違いして拘留しようとする。結局彼はアイゼンシュタインということにされ、刑務所に連行されて行く。一人取り残されたロザリンデは、孤独の寂しさをひしひしと感じる。
(C)出谷 啓
第2幕へつづく

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