【あらすじ】
時と所:18世紀・トレド(スペイン)
全1幕/町の時計店
今日は月に一度の時計点検で、時計屋のトルケマダは市役所へ行かねばならない。トルケマダの妻コンセプティオンは、早く市役所へ行けと夫を急かした。妻が夫を急かすのには理由があった。月に一度夫の出かける日に、妻は浮気相手を家に入れていたのだ。しかしこの日は、ロバ曳きのラミーロが時計の修理に来ていたので妻は困った。そこへ若い恋人ゴンサルヴェがやってくる気配..。彼女は慌ててラミーロに「この大時計を2階の寝室に運んでくださるかしら?」と、2つあるうちの1つの大時計を運ぶよう頼み、彼を2階へ追いやった。ちょうど夫に「寝室用の時計が欲しい」と言っていたところだ。ところが恋人のゴンサルヴェは、店に入るなり愛の詩を語り出し、そこへラミーロが戻ってきてしまう。そこでコンセプティオンは下りてきたばかりのラミーロを捉まえ「時計は別の物に替えたいの。今運んだ時計を下に戻してくださる?」と甘えた声で頼み、お人好しのラミーロもこれを快く引受け2階に上がる。その間コンセプティオンは、店に残された方の大時計に恋人を押し込み、彼を時計ごと2階に運んでもらおうと考えた。そこへ銀行家のドン・イニゴがやってきて「私が月に一度の時計点検をご主人に頼み、あなたと2人きりになる時間をつくったのですよ。」とコンセプティオンを口説き始めた。イニゴに全く興味のない彼女がそれを聞き流していると、2階から最初の大時計を持ったラミーロが戻ってきた。「こっちの時計は重いけれど大丈夫かしら?」と今度は恋人の入った時計を持たせると、コンセプティオンはラミーロと一緒に2階へ上がってしまう。1人残されたイニゴは、自分には茶目っ気が足りないのではないかと考え、コンセプティオンを驚かせようと、今運ばれてきた大時計の中に入ってみた。そこへ店番を頼まれたラミーロが1人下りてきて、コンセプティオンの素晴らしさを称え始める。彼もまた彼女の魅力に嵌ってしまった1人のようだ。そのうちコンセプティオンも下りてきて「やっぱりあの時計は寝室に合わない..」と言うので、ラミーロはまたしても2階に恋人入りの時計を取りにいった。コンセプティオンは店にある大時計にイニゴが入っているのに気付き、出てくるように言うが、ラミーロが時計を持って下りてきてしまい、イニゴは開けたばかりの時計の蓋をすぐにまた閉めた。今度はイニゴ入りの時計が上へ運ばれ、ゴンサルヴェ入りの時計が店に置かれた。しかし、コンセプティオンが折角ゴンサルヴェを逃がそうとしたのに、彼はまた愛の詩を語り始めたので、コンセプティオンは呆れて別の部屋へ引っ込んだ。結局またラミーロが下りてきて、ゴンサルヴェは時計から出そびれる。暫くして店に様子を見に戻ったコンセプティオンがラミーロに声を掛けると、ラミーロは頼まれもしないのに2階のイニゴ入りの時計を取りにいった。もう彼は呼ばれただけで時計の入れ替えをするようになっていた。すっかり気疲れしてしまったコンセプティオンがふと階段に目をやると、イニゴの入った大時計を担いだラミーロが下りてくる。彼女は時計に入っている2人の男たちに比べて、ラミーロは何て逞しく素敵なんだろうと、急にラミーロに魅力を感じ「もう時計は2つとも下に置いたままでいいわ!」と彼を寝室へ誘った。勿論コンセプティオンに惹かれていたラミーロは、大喜びで付いていく。
 店内に残された2人が時計から出ようとしたところへ、時計屋の主人トルケマダが帰ってきた。2人は慌てて時計に隠れたがすぐに気付かれ、そんなにこの時計が気に入ったのならばどうぞお買い上げくださいと、大時計を売りつけられてしまう。その上太っちょのイニゴは、お腹が閊えて時計から出られない。そこへ妻のコンセプティオンとラミーロが下りてきた。ラミーロはトルケマダとゴンサルヴェがどんなに頑張っても出せなかったイニゴを、いとも簡単に時計から引っぱり出した。トルケマダが妻に「大時計は売れてしまったので寝室には置けないよ」と言うと、彼女は「ラミーロが毎日同じ時間に家の前を通るので、時間を知らせてもらうわ」と答える。トルケマダがラミーロに「それではよろしく!」と頼み、その後5人は並んでスペイン調のハバネラリズムで「恋人は役に立つ者を1人だけ選べ!」(イタリアの作家ボカッチョの教訓に因む)と歌いフィナーレとなる。(幕)
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