第5幕
第1場/宮廷の庭
イネスは何とか一命を取り留め、ヴァスコのいる宮廷に辿り着く。イネスの姿を見付けたヴァスコは、ようやく一緒になれると喜び駆け寄るイネスに「今はセリカと結婚し、彼女を愛している」と打ち明けた。そこへ現れたセリカは、2人の姿を見てすっかりヴァスコに裏切られたと思い込み怒りに震える。イネスは何とかセリカの誤解を解こうと「ヴァスコは貴女を裏切ったりしていません!」と必死に弁明し、「貴女を愛していると聞かされたのです」と涙を浮かべながらヴァスコを庇う。そんなイネスの姿に、とてもこの2人の愛には太刀打ちできないと感じたセリカは、2人を逃がすようにとネルスコに命じ、自分は姿を消す決心をする。
第2場/海を見下ろす岬
セリカは岬の上から、幸せな2人を乗せた船が出航していくのを眺めていた。そして意を決したように猛毒の香りを放つマンスニールの木の下に歩み寄ると、その花を集めて中に顔を埋めた。薄れていく意識の中で、向こうからやって来るのは愛するヴァスコの姿だった。彼は自分の許へ戻って来てくれたのだ!
ネルスコが岬に駆け付けた時、セリカは既に息をしていなかったが、その死に顔は穏やかに微笑んでいるように見えた。最後までセリカを愛したネルスコもまた、そっと花の中に顔を埋めた。(幕)
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