【あらすじ】
全1幕/女の寝室
もう夜も更けた頃。女はネグリジェの上からガウンを羽織った姿でベッドサイドにいた。電話のベルが鳴るので彼女が出ると、それはただの間違い電話。けれどすぐまた掛かって来た電話は、数日前に別れた恋人からだった。女は5年間一緒にいた恋人に「別の女性と結婚するから別れてくれ」と言われ絶望していたが、実はまだ彼と話しがしたくて仕方なかった。女はそんな気持ちを相手に悟られないように、必死で平静を装いながら「マルトと食事をして帰ったばかりよ。今まだ服も帽子も着けたままなの」と明るく言ってみせた。そして悲しみをおくびにも出さずに「貴方からの手紙は送り返せばいい?」「今の貴方の格好を当ててみせましょうか?」などと話しを始めるが、電話は途中で混線して切れてしまう。女はすぐに男に電話を掛け直すが、使用人が出て彼の不在を知らせる。せっかく話しができたのに突然中断されてしまった女の心は乱れ、再び彼から電話が掛かって来た時には、既に冷静ではいられなくなっていた。女は先程とは打って変わって、溢れだす感情のままに男への未練を語ると「本当は私睡眠薬を沢山飲んだの。マルトが心配して駆け付けてくれたわ」と死ぬ覚悟だったことも仄めかした。その後幾度となく電話が混線したり切れたりする中、女は絶望する気持ちと男を愛する気持ちを伝え続け、男は電話が切れる度にまた女に電話を掛け直した。そして最後には女が「貴方の声が私に絡み付いているわ…」と言うと、電話線を首に巻き付け「私たちの想い出の地マルセイユに行くというなら、どうぞ2人で泊まったホテルにだけは行かないでね。ああ愛しているわ愛しているわ…もう電話を切ってください…愛しているわ…愛して…」と呟きながら、自分の首を強く絞め意識をなくす。女の手にしていた受話器が床に落ち幕となる。

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