時と所:1500年代・スコットランドのパース
第1幕/鍛冶屋の作業場
 武器鍛冶職人のヘンリー・スミスは、他の職人たちと共に仕事に精を出していたが、今日は年に一度のカーニヴァル(謝肉祭)の日。職人たちは仕事を早めに終わらせて、次々とカーニヴァルへと繰り出して行く。ヘンリーは皆の去った作業場で、一人恋人のキャサリンに想いを馳せる。彼女と一日でも早く結婚したいヘンリーの気持ちを知ってか知らずか、キャサリンはもう随分と長い間ヘンリーを待たせている。そこへ突然一人の女性が駆け込んで来た。ロマの踊り子らしきその女性は「暴漢に追われているので匿ってください!」と言うと、作業場の物陰に身を隠した。暫くして出て来たその女性は「私はロマの女王マブです」と名乗り、匿ってくれたお礼にとヘンリーの手相を占い「貴方の恋人は浮気者だが、一途に想い続ければ愛は実るはず」と告げる。そこへ恋人のキャサリンがやって来るので、ヘンリーは咄嗟にマブに隠れるよう言う。他の女性と一緒にいるところなど見られては、キャサリンにどう誤解されるか分からない。キャサリンは父親で手袋職人のサイモンと、その弟子のラルフと共に、謝肉祭のディナーをするためにやって来た。サイモンとラルフが食料を取りに行ってる間、ヘンリーとキャサリンは二人きりの時間を楽しみ、ヘンリーは「三日後のヴァレンタイン・デーに、僕との結婚の誓ってほしい」と、キャサリンに手作りの花のブローチを手渡した。そこへ突然「剣の修理をしてほしい」と、公爵のロスシーが入って来た。ロスシーは外で美しいキャサリンを見初め、跡をつけて来たのだった。ヘンリーが剣の修理に取り掛かると、ロスシーは早速キャサリンを口説き始める。「今夜宮殿の舞踏会に、仮面を着けて是非来てください」と無理やりキャサリンを抱き締めようとするロスシーに、怒り狂ったヘンリーはハンマーで殴り掛かろうとするが、マブがそれを止めに飛び出して来たので、キャサリンは驚き息を呑んだ。他の女性が隠れていたという事実に、ヘンリーのいかなる言い訳も通用せず、キャサリンは怒って貰ったブローチを床に投げ付けると、その場から立ち去ってしまった。マブが「こんな素敵なブローチを…」と、そっとそれを拾いあげた。
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