第3幕 皇帝の部屋
皇帝は病に伏し、巨大なベッドに横たわっている。傍らには死神が王冠を被り、剣と紋章旗を持って佇み、亡霊達が蠢いている。皇帝が「何者か」と尋ねると、亡霊達は「私達はあなたの過去である。私達を忘れてはならない」と答える。皇帝は亡霊達の声をかき消そうと音楽隊を呼ぶが返事は無い。その時森に帰ってしまったナイチンゲールが現れ「私が今夜の庭園がどんなに美しいかをお話ししましょう」と歌い出す。するとあまりに美しいその歌声に死神さえも魅了され「もっと歌え!」と注文を付ける。そこでナイチンゲールは、皇帝に王冠と剣と紋章旗を返すのなら歌いましょうと答え「月は悲しげに輝き、静寂の中に忘れ去られた墓は苔に覆われている。」と歌う。歌が終わると死神は、約束通り姿を消し、辺りに明りが差し込んで来る。皇帝は「何と甘い歌声よ!今私の力が蘇る。もうどこにも行かないでくれ。この宮廷で一番高い位を授けよう」と告げ、ナイチンゲールを引き留める。するとナイチンゲールは「いえいえ、あなたは私にもっと尊い贈り物を下さいました。あなたの瞳を満たす涙は私にとってかけがえのない勲章です。私は毎晩ここに来て、あなたのために夜明けまで歌いましょう。それではさようなら。夜になったら参ります。」と言うと飛び去って行く。夜が明け厳かな行列をなす廷臣達が、朝の挨拶にやって来る。彼らは内心、夜のうちに皇帝が逝ってしまっていることを期待しているのだった。しかし寝室のカーテンを開けると、部屋には朝日が満ち溢れ、皇帝は正装に着替えて部屋の中央にしっかりと立っている。廷臣達は慌ててひれ伏し、皇帝は「ようこそ、諸君!」と元気に声をかける。小鳥たちの囀りが聞こえ、一日が始まる。〈幕〉

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