【あらすじ】
時と場所:15世紀、スイスのルーデンツ、アール河の畔
第1幕 「遺言」
第1場 アール河畔の宿
夜が明け祈りの聖歌が流れている。宿屋ではコッラードが弟エンリーコとの5年ぶりの再会を心待ちにしながら、美しい婚約者マチルデに想いを馳せ「ああ!もう涙もでなかった」と歌う。そこにエンリーコが現れ兄弟は感激の再会をはたし、お互い積もる話をする。そして話はコッラードの婚約のいきさつに及ぶ。かつてコッラードはルーデンツ伯爵の娘マリーアと恋に落ちるが伯爵からの許を得られずに、駆け落ちをしてヴェネツィアに逃げる。そこで二人の幸せな生活が始まるはずだったが、激情家で嫉妬深いコッラードはマリーアの不貞を疑い、ローマの地下墓地カタゴンテに連れて行き、置き去りにする。マリーアは身の潔白を叫びながら恐怖のあまり気をうしなってしまう。コッラードも気持ちがおさまると罪悪感に苛まれ、カタゴンテの墓守りにマリーアを助け出すように金をにぎらせ、その後も偽名を使いながらマリーアの消息を追っていた。しかし月日が経つうちにコッラードはマリーアの従姉妹マチルデと愛し合うようになる。兄の話に耳を傾けていたエンリーコはマチルデの名を聞いて愕然とする。それはエンリーコが密かに想いを寄せていた女性なのだった。そうとは知らぬコッラードがマチルデへの想いを熱く歌いあげるのをエンリーコは黙って聴いているほかなかった。上機嫌のコッラードは「マリーアが消息を絶って1年、明日になればルーデンツ伯爵の遺言で城は従姉妹のマチルデが相続し、自分は夫としてルーデンツ城主になるのだ」と語る。
第2場 ルーデンツ城、回廊
一方ルーデンツ城では帰らない娘のマリーアを待ち、失意のままルーデンツ伯爵は亡くなっていた。忠実なる年老いた家臣ランバルトが、伯爵家の行く末を嘆いていると、突然行方知れずになっていたマリーアが帰って来る。変わり果てた姿で父の銅像に縋って泣き崩れているマリーアをランバルトは驚きと喜びとで迎え入れる。マリーアは「コッラードに不貞を疑われ、カタゴンテに置き去りにされたため、修道院に身を隠すつもりで人目を忍んで帰ってきました」と話す。するとランバルトは「亡くなられたルーデンツ伯爵はコッラードの隠された素性を知り、マリーア様との結婚に反対なさいました。」と打ち明け、正当な家督の継承者としてルーデンツ家を継いで欲しいと懇願する。しかしマリーアは、若気の至りで犯した浅はかな行いを恥じ「ええ、悔悟の僧院のヴェールを」と歌い修道女として生きる決意は変わらないと告げ身を隠す。そこにマチルデが婚礼の準備を整え侍女たちを引き連れてやって来る。コッラードも弟のエンリーコを連れて現れ、新郎新婦が対面する。その時エンリーコに気付いたマチルデは驚きを隠せなかった。なぜならマチルデはかつて伯爵の遺言で修道女として生きることを定められており、その頃戦場から帰還するエンリーコに出会っていたのだった。しかし遺言書には続きがあり、マリーアが1年経っても帰えらない時は、相続権はマチルデに移り結婚をして城主となるよう指示されていた。今日は丁度1年目となる日で、マチルデがコッラードとの結婚を宣言したその時、様子を窺っていたマリーアが現れる。復讐に燃えるマリーアはコッラードへの積年の恨みを吐き出すと追放を宣言し、マチルデには修道院に入るよう命じる。
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