第3幕
 レナートの書斎。レナートが剣を携えて、アメリアとともに入って来る。不倫を責め、彼女の死を求めるレナートに、アメリアはただ一目息子に会わせて欲しいと、アリア「私の最後の願い」で涙ながらに嘆願する。レナートも「立て、息子に会うのは許してやろう」と、妻を別室へ行かせ、総督の肖像をにらみながら、「お前だったのか、彼女の心を汚した奴は」とアリアをうたう。謀反人たちが約束どおり訪ねて来ると、息子を人質にしても、総督暗殺の仲間に加わると誓う。誰が総督を殺すかを3人で、くじ引きをして決めようとする。オスカルが舞踏会の招待状を届けに来たと、伝えに来たアメリアにくじを引かせる。彼女が引いた札には、レナートの名が記されている。彼女はリッカルドの身を案じ、レナートと謀反人たちは、当日は揃いのマントを着ること、合言葉に「死」を使うなどを打ち合わせる。
 総督の執務室。リッカルドは、レナート夫妻を新しい任地に送り、アメリアとの恋を諦めようと、「永遠に君を失わん」とアリアをうたう。するとオスカルが入って来て、見知らぬ女性から内密に渡すよう、手紙を預かって来たとリッカルドに渡す。そこには今夜の仮面舞踏会には、暗殺者が紛れ込んでいると書かれてあった。だが彼は断固出席するといい、オスカルを下がらせた後、「ああ、もう一度だけアメリアに会える」と、高らかにうたい上げる。奥のボール・ルームからは、賑やかな舞踏会の音楽が聞こえ、総督は平静を装ってその場に出て行く。
 華やかな舞踏会の最中に、揃いのマントをつけた謀反人たちが、総督の姿を求めて広間中を歩き回っている。レナートはオスカルを捕まえて、急ぎの用があるからといって、総督の変装の具合を尋ねる。オスカルは茶目っ気たっぷりに、「知っているけどいえない」と答える。だが言葉巧みに誘導されて、つい「黒いマントに、胸にはバラ色のリボン」と口を滑らせてしまう。一方リッカルドは、警告を与えたのがアメリアだったのを突き止め、「早く逃げて」というアメリアの心配をよそに、「レナートとともに新しい任地に行かせることにした」と告げるが、突然2人に近づいたレナートが、背後から総督を刺して倒す。だが総督は騒ぐ人々を制して、レナートに君の妻を愛していたが、彼女は潔白だと告白し、君を本国に帰して栄転させる辞令がこれだといい、全員に今回の事件の関係者は、すべて特赦として処罰はしないと告げてこと切れる。人々は忌まわしい一夜を呪いながら、総督の寛大な心を褒め称え、その冥福を祈り幕が降りる。
(C) 出谷 啓
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