【あらすじ】
時と所:旧約聖書「出エジプト記」の時代・エジプト
<第1幕>
第1場/シナイ(ホレブ)山麓の荒野
エジプト人に虐待されている同胞イスラエル人を救うため、エジプト人看守を殺害したモーゼスは、ファラオ(古代エジプトの君主の称号)から逃れ、ミディアンの地で羊飼いとして暮らしていた。ある日モーゼスは、荒れ地の燃える茂みの中から「イスラエルの民を救うため、汝神の預言者となれ!」という神の声を聞く。しかし年老いたモーゼスは、自分にそんな大役はとても務まらないし、雄弁でもない自分が人々を説得する自信はないと答える。すると神の声は「兄であるアーロンに、代弁者となってもらうがよい」と告げ、すぐさまアーロンに会うよう命じると、「杖を蛇に変える力・ナイルの水を血に変える力」をモーゼスに与えた。
第2場/荒野
モーゼスは兄アーロンと会い、神からのお告げを伝えると「神は我々の想像を超えたところにあるのだ」と、全知全能の唯一絶対神の存在を説き「共にイスラエルの民を救おう!」と意気込んだ。しかしアーロンは「人々が想像できないものを信じ、愛することができるのだろうか?」と疑問を投げ掛ける。アーロンは「神は人間の行いにより報いたり罰したりするもの」と信じていた。2人の意見は食い違ったが、アーロンは最終的には「全知全能の神よ!同胞たちをファラオの手から救いたまえ!」と神に祈りを捧げる。
第3場/エジプトのヘブライ人居住地
若い男と少女が「アーロンは弟のモーゼスに会いに行った」と話している。人々はエジプト人を殺害して逃げたモーゼスに「この先再び流血の事態が起こるのでは?」との不安を抱いていたが、「新しい神の出現で、イスラエルの民がファラオから解放される日も近いのか」という期待もあった。そこへモーゼスとアーロンがやって来たので、人々は「祈りを捧げるべき神はどこだ?」と2人に尋ねる。モーゼスが「神は人間の想像を超えた存在故、目を閉じ感じてほしい」と答えると、人々は「目に見えないものなどどうやって信じたらいいのだ!」と2人を嘲るので、アーロンはモーゼスの杖を蛇の姿に変え、皆に神の不思議な力を示してみせる。人々は驚くが、司祭だけは「その神が自分たちを救ってくれるとは思えない」と言うので、今度はモーゼスの皮膚病に罹った手を見せ、その手の爛れをあっという間に治してみせる。人々は歓喜の声を上げ、心の中に新しい神を宿らせることを受け入れると、ファラオの手から逃れ砂漠を抜け、乳と蜜の流れる約束の地へ行こうと決心する。
<間奏曲>
荒野でモーゼスの帰りを待つ、イスラエルの民の不安な気持ちが短く歌われている。(モーゼスは神の掟を授かりに、シナイ山へ行ったまま40日間戻らなかった)

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