パリアッチ(道化師)
あらすじ:
プロローグ
 開幕に先立って、プロローグが置かれている。このオペラで重要な役割りを果たす、いくつかの旋律が次々に演奏されてから、道化師の扮装をしたトニオが幕の前にあらわれ、「皆さん、ごめんください」と挨拶があってから、仮面劇特有の前口上が述べられる。ある日作者は思い出の糸を手繰り、涙とため息のうちにこれを書いたが、これには人生の真実が、恋、憎しみ、悲しみ、怒り、嘲りがあらわに描かれている。しかし卑しい道化役者の私らも、やはり人の子、同じ血と肉を持ち、皆様と同じ浮世を生きるもの。それをどうかご承知の上で、ご覧頂きたく存じます。それでは始まり、始まりと口上を述べて引き下がる。
第1幕
 モンタルトの村はずれの辻、ときは1865年から70年の聖母昇天祭の日。舞台には芝居のかけ小屋があり、その前を着飾った村人たちが、村回りから帰って来る役者たちを待っている。調子はずれのラッパが鳴り渡り、やがてペッペを先頭に旅役者の一行が登場する。「帰って来たぞ、パリアッチョ万歳」と子供たちは大はしゃぎ。馬車には座長のカニオと、スター女優のネッダが乗っていて、カニオが太鼓を打ち鳴らし口上を述べる。村人たちは喜んで騒ぐ。カニオは馬車から降り、次いでネッダが降りようとすると、彼女に密かに想いを寄せているくる病のトニオが、手を貸そうとする。すると嫉妬深いカニオはトニオに殴りかかる。村人たちは哄笑するが、トニオは今に見ていろと一人呟く。
 村人の一人がカニオとトニオに、飲みに行こうと誘うが、馬の手入れがあるからと、トニオが断ると、その男はカニオにどうやらあの男は、お前さんの女房に気があるらしいぜというので、カニオは芝居の上ならともかく、もしそれが本当ならただじゃすまない、めったなことをいうんじゃないよと、たしなめる。
 バグパイプの音とともに、村人たちの行列が差しかかり、「鐘の合唱」がうたわれる。一人になったネッダは、少女の頃を思い出して、バラッテルラ「鳥の歌」をうたう。大空を矢のように飛ぶ小鳥、雨にも負けず、翼を張り、海を越えて見知らぬ国へと飛んで行く、という内容の華やかなアリアだ。そこへトニオがあらわれて、ネッダにいい寄る。だが彼女は相手にせず、手に持った鞭をとってトニオを打つ。すると彼は忌々しげに、この復讐はきっとしてみせるといって去る。
 そこへ村の青年シルヴィオが、かねてからの恋人ネッダに会いにやって来る。二人は今晩、駆け落ちしようと相談する。そして熱っぽく、愛の二重唱をうたう。物陰からこの様子をみていたトニオは、居酒屋へ駆けつけてカニオを連れて来る。カニオが見ているのも知らずに、ネッダとシルヴィオは固く抱き合い、彼女は今夜私はあなたのものよという。そのときナイフを振りかざしたカニオがあらわれたので、シルヴィオは驚いて逃げる。彼の後を追いかけたカニオは、むなしく戻って来る。そしてネッダにナイフを突きつけ、あの男の名前はと迫るが、彼女は頑として口を割らない。そのときペッペが、客が詰めかけているからといって割って入る。その場は何とか治まるが、残されたカニオは妻に裏切られながらも、道化芝居をしなければならない、わが身の辛さを嘆く。有名なカニオのアリア、「衣装を付けろ」である。衣装を付けろ、白粉を塗れ、客の気に入るように。女房のコロンビーナをアルレッキーノに奪われても、笑うんだ、パリアッチョ、愛に破れ、たとえ胸がつぶれようとも、笑え、パリアッチョと。カニオは男泣きに号泣する。(C)出谷 啓
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