第2幕
 クリングゾルの城。クリングゾルが魔法の鏡を眺めながら、眠りにおちていたクンドリーを起こす。彼は鏡に映った1人の愚者を誘惑せよと命令する。だが彼女は相手が、愚という楯を持っているので、征服しにくいと答える。パルジファルが登場すると、クリングゾルは魔法で世にも美しい庭園を出現させ、魔女たちに愚者を誘惑する合唱をさせる。魔女たちは官能的で魅惑的な、誘惑の歌をうたい始める。彼は子供のように無邪気で、反対に魔女たちは、彼を我がものにしようと争いを始める。嫌気がさしたパルジファルが、その場を去ろうとすると、クンドリーが絶世の美女の姿になって、彼をなまめかしく呼び止める。彼は長いあいだこの名前で呼ばれたことがなかったので、驚いて立ち止まり、自分の名がパルジファルだったのを思い出す。そしてクンドリーは情熱を傾けて、彼の母親ヘルツェライデのことを語り始める。彼は母の自分に対する愛の深さを初めて知り、そうとは知らずに1人置き去りにして、心痛の余り死に至らしめたのを後悔し、思わず悲痛な叫び声を上げる。クンドリーは彼のその気持ちを慰めると称して、彼の口に熱烈なキスをする。そしてこのキスが、聖杯を守る騎士たちの運命を左右した餌だった。パルジファルはこのキスのために、哀れな王アンフォルタスを思い起こし、そして改めて恐怖を感じるのだった。またクンドリーは自分の誘惑が、功を奏さなかった結果を意外に感じる。彼女はクリングゾルに助けを求め、彼は王から奪った聖なる槍を持ってあらわれ、パルジファルに投げつける。ところが不思議なことに、槍はパルジファルの頭上で空中に止まる。逆にパルジファルがその聖槍で十字を描くと、物凄い音響とともにクリングゾルの城は崩れ落ち、魔法の花園は荒涼とした荒地になり、クンドリーは絶叫してその場に倒れる。するとパルジファルは、彼女に一瞥をくれてその場から立ち去る。クンドリーの目はどこまでも、パルジファルの姿を追っている。
(C) 出谷 啓
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