第2幕 第1場/マレンマの城の牢獄
 マレンマ当主ネッロの妻ピーアは、城の牢獄に鎖で繋がれていた。戦地ではピーアの弟ロドリーゴが、従者ランベルトから姉の窮状を聞かされ、胸が押し潰されそうだった。早速ロドリーゴは兵士たちと共にピーアを救いにいくことにする。
 その頃ネッロの従弟ギーノは、ピーアの許を訪れると「自分のものになってくれたらここから救い出すぞ」と持ち掛けていた。ところがこの時ピーアの密会相手が弟であったことを知り、ギーノは自分の思い違いのせいで大変なことになってしまったと嘆く。ピーアを愛するギーノは何とか彼女を救いたいと思うが、貞淑なピーアはギーノの誘惑に屈することは決してなさそうだ。夫を裏切るくらいなら死を選ぶとさえ言う。ピーアのあまりの一途さにギーノは心を打たれ、早急にネッロの誤解を解きにいき、罪深い自分は戦場に散る覚悟を決める。しかしギーノが去った後、城には「明朝までに知らせがなければピーアに死を!」とのネッロの指示書が届けられていた。
第2場/隠者の庵
 嵐の夜。天の神の怒りを鎮めようと僧侶たちが祈りを捧げているところへ、敵の大軍から逃れて戻ったネッロがやってくる。そして隠者のピエーロに、妻に裏切られた苦しい胸の内を訴える「彼女を失った私の心に Lei perduta,in core ascondo」。ピエーロが「奥様は無実では..」と諭したが、ネッロの中の嫉妬の炎は到底消し去ることができない。そこへ戦地で深手を負い虫の息となったギーノが現れ、ピーアの密会相手が弟のロドリーゴだったこと、彼女がどんなにネッロを愛しているかということ、そして最後に自分もピーアを愛していたことを告げ死んでいった。全てが誤解だったと知ったネッロは、朝までに城へ戻らなければ大変なことになると、荒れ狂う嵐の中へと飛び出していった。
第3場/牢獄
 牢に繋がれたピーアは、夫であるネッロが戦死した夢を見てうなされ、ハッと目を覚ました。既に夜は明け、ピーアの目の前にある水差しには、ネッロの従者ウバルドにより毒が盛られていた。果してピーアはその水を飲み、愛する夫を想い歌う。「夫よ、今すぐ私のところへ.. Sposo,ah! Tronca ogni dimora」
 そこへ慌てふためいたネッロがやってきて、ピーアに許しを請う。そしてまだ妻が生きていることを喜び、しっかりと彼女を抱き締めた。ところがピーアは突然苦しみ出し、ウバルドから既に毒を飲んでいると聞かされたネッロの顔は真っ青になった。その時ピーアの弟ロドリーゴが、姉を救いに牢に押し入ってきた。ピーアが毒を盛られたと聞き、ロドリーゴはネッロを殺そうとするが、瀕死の状態のピーアはこれを止め「ネッロは誤解をしていただけなのです。死んで行く私を憐れと思うならば、どうか二人とも争いをやめてください!」と切願した。こうして静かに息絶えたピーアの許で、悲しみに暮れるネッロとロドリーゴは、彼女の願い通りに和解を誓った。(幕)

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