第1幕
 スペインの貴族の娘コンスタンツェは、航海中に海賊に拉致され、召し使いのペドリロと女中のブロンデとともに、トルコの太守セリムに売れ渡され、その海辺の宮殿に囲われている。セリムはコンスタンツェに愛情を注ぐが、彼女には故郷に恋人のベルモンテがいるので、色好い返事はしない。そしてペドリロはこっそりと、故郷のベルモンテに彼女の救出を依頼する。物語は以上の経緯を前提に展開する。
 海辺にある太守の宮殿前の広場、早速コンスタンツェを救出に来たベルモンテが、もうすぐ君に会えると最初のアリアをうたう。宮殿の番人のオスミンが庭木の手入れをしながら、鼻歌をうたっているので、ベルモンテはペドリロのことを訊ねようとする。だがオスミンの方は胡散臭がって、相手になろうとはしない。オスミンがペドリロの悪口をいっているところへ、当の本人がやって来るので、オスミンは有名なアリア、「女に見とれてやってきた若僧どもは」をうたう。オスミンが退場してベルモンテが再登場、ペドリロとの再会を喜ぶ。コンスタンツェの無事を確認して、太守が彼女を求め、オスミンがペドリロの恋人、ブロンデを狙っていることが分かる。二人の女性を連れて逃げようと計画して、ペドリロはベルモンテを太守に、建築家として紹介する手筈を決めて退場する。そこでベルモンテは、「何と不安げに、私の胸はときめくことか」というアリアをうたう。するとペドリロが飛んで来て、太守が帰って来たから隠れるようにという。
 トルコ風の行進曲とともに、太守がコンスタンツェを伴なって登場、兵隊たちは太守を称えて合唱する。太守はコンスタンツェの悲しげな表情をいぶかしんで、その原因を尋ねる。「私は恋をしていて、本当に幸せでした。でも喜びは消えうせて、生き別れが運命になりました」と、コロラトゥーラのアリアで彼女は答える。一人残って物思いに耽っている太守に、ペドリロがベルモンテをイタリアの建築家だが、使ってやって欲しいと頼み込む。太守はそれを承知して退場する。これでことは巧く運ぶと、ペドリロは喜ぶが、ベルモンテは一時も早くコンスタンツェに会いたいとはやる。ペドリロはここは敵の本拠なのだからと、注意を促して庭園の方へ行こうとすると、オスミンが割って入って2人を止める。ペドリロが、この人は建築家だと説明するが、オスミンは「俺はだまされないぞ」と毒づく。こうしてフィナーレの三重唱が始まり、「出て失せろ、さもないと鞭で引っぱたくぞ」とオスミン、他の2人は「そんなもてなしは残念だ」と答える。2人はオスミンを追い出し、庭園に入って行き第1幕は終わりを告げる。
(C)出谷 啓
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