<第3幕>
タメルラーノの宮殿
第1場 アステリアは「父と恋人の心は私の揺るぎない誠実と一つになったが、二人を失う不安で心は落ち着かない」と歌う。そこにバヤゼットが現れ「最後の宝」として毒を隠し入れた指輪を渡すと「屈辱をうけるより命を絶て」と命じ、娘を抱き寄せ「レテ川の岸辺で待っていておくれ。復讐を果たし父も後を追う」と誓う。
第2〜5場 タメルラーノは意外にも、誇り高きアステリアへの想いを募らせ「玉座はまだ空いていると伝えよ」とアンドロニコに命じる。しかしアンドロニコは躊躇しながらも「私はアステリアの恋人で陛下の敵なのです!」と拒絶する。すると様子を伺っていたアステリアが駆け寄り「行先のないアンドロニコの愛について行きます!」と告げる。恩情を踏みにじられたと激昂するタメルラーノは「美しい女。激しい憎悪が血に湧き上がる」と歌い、父親ともども奴隷として辱めると言い捨てて去っていく。残されたアンドロニコとアステリアは死の瞬間まで強く結ばれていると誓い「私はあなたの中に生きている」と二重唱する。
第6〜7場 誰もいない玉座の間で、イレーネはタメルラーノが今でもアステリアを愛している事を嘆き、健気にも「私はもう彼を憎まない。私に微笑みかけてくれるなら、心から愛するでしょう」と歌う。それを聞いたアンドロニコの従者レオーネは「私は王女様に不安な思いなどさせはしない」と歌い、勇ましくタメルラーノの過ちを正そうと決意する。
第8場 タメルラーノはアンドロニコとバヤゼットを呼びつけ、奴隷となったアステリアに「酌をせよ」と命じる。アステリアは跪き、指輪に隠した毒を杯に入れ差し出す。タメルラーノが得意げに杯を傾けようとした瞬間イレーネが割って入り、杯には毒が盛られていると知らせる。タメルラーノは再度の裏切りに激怒し「その杯をアンドロニコかバヤゼットに先に飲ませよ!」と命じる。追い詰められたアステリアが「なんと惨い運命よ!」と歌い毒を飲もうとすると、アンドロニコが駆け寄り杯を奪う。怒り心頭に達したタメルラーノはバヤゼットに向かい「二度までも私を裏切ったアステリアを奴隷達のハーレムの餌食にする!」と言い放つ。覚悟を決めたバヤゼットは「残忍なタメルラーノを苦しめるために死者の国から蘇ろう!」と歌い去って行く。皆が去り、玉座に座るタメルラーノは改めて忠実なイレーネに感じ、后として迎えることを決意する。
第9〜10場 バヤゼットの頼みでアンドロニコ、アステリア、タメルラーノ、レオーネが一堂に会している。現れたバヤゼットはすでに毒をあおっているが、穏やかな表情を浮かべ「なんと喜ばしく、多くの事があった日々よ、王よ、友よ、私の心は静かです」と歌う。そして娘を残していくことだけが心残りだとアステリアを抱き寄せると、最後の力を振り絞り「私は地獄で最も残忍な復讐の鬼と化そう!」と歌いながら去っていく。アステリアが「悪魔!」と叫び父の後を追い走り去る。タメルラーノはアステリアを見張るよう命じ、自害しようとするアンドロニコを制止し「バヤゼットの死で私の怒りは消えた。私はイレーネとタタールの帝国を治めよう!アンドロニコはアステリアを娶り、ギリシャを統治せよ。今日が友好の始まりだ!」と告げる。タメルラーノ、イレーネ、アンドロニコ、レオーネの四重唱で「夜の闇に美しい朝の光が差し込む」と平和を讃歌し幕となる。

RETURN
オペラ名曲辞典TOP