【あらすじ】
時と所:1940年代・ヨーロッパのどこかの国
第1幕
第1場/ジョンのアパート
 通りのカフェからシャンソンのレコードが流れている早朝。カフェの向かいにある小さなアパートの一室に、突然怪我を負ったジョン・ソレルが駈け込んで来た。部屋にいた妻のマグダとジョンの母親は驚き、慌てて傷の手当てをしたが、すぐに追手の警察官が部屋にやって来たので、2人は急いでジョンを屋根裏部屋に匿った。組織の活動家であるジョンは、この日仲間たちと集会を開いていたが、仲間の中に当局と通じる裏切り者がいたらしく、すぐに秘密警察に踏み込まれてしまったのだ。警察官は必死で家探しをしたがジョンは見つからず、頑なに口を閉ざすマグダに捨て台詞を吐きながら出て行った。その後すぐに向かいの靴屋のおかみの叫び声が聞こえ、靴屋の主人マイケルが捕えられる姿が見えた。ジョンは屋根裏から下りて来るとマグダに向かい「今夜国境を越えて亡命する。お前はある国の領事館でヴィザを取り保護を求めろ。今後の連絡はガラス屋のアッサンがする。少年がガラス窓を割るのを合図にアッサンを呼んでくれ」と言うとマグダや母を抱き締め、すやすやと眠るまだ赤ん坊の我が子にキスをし部屋を後にした。
第2場/領事館の待合室
 ヴィザの申請者たちが順番を待っている待合室には、タイプを打ちながら機械的に「次の人!」と告げる領事秘書の声が響く。最初に呼ばれたコフナー氏は、書類不備でもう何度も無駄足を踏んでいるのに、結局この日も写真のサイズが合わないと受け付けてもらえなかった。次の女性は「男とこの国へ来たが相手に逃げられ、子供を抱えて自分は病気になってしまった。助けてほしい…」と言う娘からの手紙を読んで聞かせ、すぐにでも娘の所へ行きたいと訴えたが、秘書は「ヴィザ取得に2ヶ月は掛かるでしょう」と冷たく言う。女性は言葉が通じなかったので、先に帰りかけていたコフナー氏が彼女の通訳をしていた。次にやっとマグダの番になったが、その時ちょうど電話が掛かって来て彼女は少し待たされた。恋人からの電話なのか、一瞬別人のように甘い声になった秘書だったが、受話器を置くとすぐにまた冷たい声と表情に戻り「領事に会いたい!」と言うマグダにも「ご主人が密入国者ならすぐには無理です」と、ただ申請書類を渡すのみだった。力を落とした人々の前で、手品師のニカ・マガドフが得意の手品をして見せる。皆は「終わりなき待合室で、時間は止まったまま In endless waiting rooms the hour stands still」と虚しく歌う。

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