第2幕
第1場/アパートの一室
マグダは何度領事館へ行っても一向にヴィザがおりない苛立ちを抑え切れず、ジョンの母親に愚痴をこぼすと寝室へと入って行った。居間にいる母親は揺り籠の中の赤ん坊に子守唄を歌ってやるが、栄養のいき届いていない赤ん坊はもう声を出す力もない。居間に戻ったマグダはテーブルにうつ伏し夢を見る。血塗れになった夫ジョンが、領事秘書を妹だと紹介した後子供に会いたいと言うが、可愛い我が子は死んでいる…。あまりの悪夢に飛び起きるマグダ。その時窓に石が投げられガラスが割れたので、マグダは夫との約束を思い出し、早速連絡係であるガラス屋のアッサンに電話をする。アッサンが来る間に秘密警察官が訪れ、ジョンの居場所を探ろうとマグダに詰め寄るが、マグダは彼らを必死で追い出すと、やって来たアッサンをすかさず招き入れた。アッサンはガラスの修理をしながら「ジョンは貴女にヴィザがおりるのを確認してから、国境を越えるつもりだ」と言うので、マグダは「ヴィザはすぐに貰えそうだと伝えて下さい」と答え、アッサンに夫宛の荷物を渡し彼を送り出した。アッサンはその言葉が嘘と分かりつつも、荷物を受け取り出て行った。2人がやり取りしている間、揺り籠の中の赤ん坊が死んでいるのを発見した母親の体が凍り付く。すぐに母親の異変に気付いたマグダは全てを悟ったが「お母さん、どうして動かないの?どうして揺り籠を揺すらないの?Mother, Why are you so still,Mother? Why don't you rock the cradle?」と歌うと「この子に私たちの泣き声が聞こえちゃうわ」と、悲しみを堪えながら母親を抱き締めた。母親は「涙はこの子のためじゃなく、もう二度と我が子に会えない可哀想な息子のために流しているのよ」と肩を震わせた。
第2場/領事館の待合室
 待合室には相変わらず領事秘書の冷たい機械的な「次の人!」の声が響いている。マグダも苛々しながら順番を待っている。まずはアンナ・ゴメツという捕虜の夫を持つ女性がやって来るが、案の定申請書類を渡されただけで帰される。次は手品師のニカ・マガドフの番。彼は身分証明等の書類が足りないことを指摘されたので「私が世界的な手品師だということを証明しよう!」と、怪訝そうな顔の秘書に様々な手品を見せたが、最後に待合室の人たちに催眠術を掛け踊らせるという騒ぎを起こしたため追い出された。もう待てないと痺れを切らしたマグダは、先に来ていた人たちに順番を譲ってもらうと、受付の秘書に今日こそ領事に会わせてほしいと詰め寄った。しかしいつものように「領事は忙しい」で済ませようとする秘書。とうとう怒りが治まらなくなったマグダは「嘘吐き!」と叫ぶと、自分の胸の内を歌いながら激しい感情を秘書にぶつけた。あまりの迫力に圧倒された秘書は「今領事は来客中なので、その後時間が取れるか聞いてみます」と領事室に入って行った。ところがその客が秘密警察の警察官だったので、マグダは帰り掛けた彼等の姿を見て気を失ってしまう。

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