第2幕 チェレヴィークの家
今日はヒーヴリャが若い神父の息子アファナーシイ・イヴァノヴィチを招いている。ヒーヴリャはいそいそと料理を作りながら、寝とぼけるチェレヴィークを痛烈に批判し「すぐに教父さんと一緒に小麦の荷車を点検して来て」と夫を追い出す口実を見つけて急きたてる。チェレヴィークは「神よ!塵芥があふれる世の中に、何故妻などお造りになったのですか?」」とぼやきながら出ていく。一方ヒーヴリャは神父の息子のためにテーブルの支度をし、身支度を整える。しかしお待ちかねの息子がなかなか現れないので、憂鬱な気分を吹き飛ばそうと「コサックの色男ブルデウス、どうして出会ってしまったの?」と愉快に歌う。すると誰かが家にこっそり近付いて来る。ヒーヴリャが柄杓を引っつかみ「追っ払ってやる!」と窓に駆け寄るが、そこに立っていたのは神父の息子で、急いで柄杓を背中に隠す。アファナーシイは並べられたご馳走を「なんて素晴らしい!」と絶賛すると、すごい勢いで平らげる。その時門をノックする音がして、チェレヴィークが教父とたくさんの客を連れて帰って来る。驚いたヒーヴリャが門を開けにいく間に、アファナーシイは急いで裏にまわり屋根裏によじ登る。やって来た客達は「赤い羊皮」という伝説の話に夢中で、狭い屋根裏に隠れるアファナーシイが動いて天井が軋むたびに、「悪魔の嘶き(囁き)が聞こえる」と言って震え上がる。そこでチェレヴィークは景気付けに酒をふるまう。教父は元気を取り戻し、客達は陽気な歌を歌いだす。すると裏で天井が落ちるような音がする。ヒーヴリャは場を取り繕うとして、客達が騒ぐから天井が落ちそうだと責めたてる。怖れる客を前に、チェレヴィークは「さて、ようこそ赤い羊皮の女王様」と宣言し、教父に赤い羊皮の伝説を詳しく話すように頼むので、教父が語りだす。 ある時ドジな悪魔が地獄を追い出され、嘆きのあまり全ての財産を飲み尽くしてしまった。そこで悪魔は大切にしていた赤い羊皮をソローチンツィのターバン屋に質入れし「年内に必ず羊皮を取りに来るから、きちんと手入れをしておけよ!」と告げ去って行った。しかしターバン屋は羊皮を旅行中の地主に三倍の値で売ってしまった。ある日の夕暮れ、男が羊皮を買いに来るが、ターバン屋は羊皮など見たことがないと嘘をつき、男は手ぶらで帰って行った。その夜ターバン屋がガサガサという音で目を覚ますと、驚いたことに全ての窓から豚の鼻づらが突き出ていた。悪魔が窓から入って来てターバン屋を鞭で打ち始めた。とうとうターバン屋は悪魔の足元に倒れ羊皮の事を白状した。「それから毎年市が立つと、豚の鼻づらをした悪魔は羊皮を探し回った。」 教父の話の最中にも、アファナーシイの立てる音が皆を驚かす。ヒーヴリャは「誰かのベンチが軋んでいるのよ!」と叫ぶ。その瞬間本当に窓ガラスが割れ、恐ろしい豚の鼻づらが部屋に突き出て来る。一方アファナーシイは堪え切れず床に落ちて来る。チェレヴィークは慌てて鍋を被り逃げ出し、教父と客たちも口々に「悪魔よ!助けてくれ!」と叫びながら出ていく。

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