第1幕
 ローマの聖アンドレア・デラ・ヴァッレ教会。政治犯のアンジェロッティが、慌しく駆け込んで来る。彼は妹に牢番を買収させ、脱獄したのである。そして妹が隠して置いた、礼拝堂の鍵を探し出すと、その中に逃げ込む。すると画家のカヴァラドッシがあらわれ、カンバスの覆いをとって、マグダラのマリアの像を描き始める。モデルは、アンジェロッティの妹である。モデルの美女と彼の恋人、歌姫のトスカを比較してうたう、アリア「妙なる調和」。すると礼拝堂から、隠れていたアンジェロッティが姿をみせ、旧友のカヴァラドッシと顔を合わせる。そして友達の脱獄を知ると、その彼を助けるべく、昼食に用意した食べ物とワインを与えて、自分の別荘に潜伏するように勧める。
 そのとき外部からトスカの呼ぶ声がするので、再びアンジェロッティを礼拝堂に隠す。入って来たトスカは人のいた気配がするので、モデルの美女と逢引していたのではと、疑いをかけて嫉妬するが、カヴァラドッシは絵の中の美女よりも、君の方が何倍も美しいとなだめて,彼女を外に送り出す。間髪を入れずアンジェロッティを連れ出すと、隠れ家への道筋と、何かあれば古井戸に隠れるよう指示するが、そのとき政治犯の脱獄を知らせる大砲が鳴り響き、急いで2人は教会を後にする。そこへ堂守があらわれ、カヴァラドッシがいないのを不審がっているところへ、信者や聖職者がやって来て、ナポレオンが大敗したという話題で盛り上がる。
 突然警視総監のスカルピアが、大勢の警官を従えてあらわれ、政治犯が脱獄してこの教会に逃げ込んだといって、特に入念にアッタヴァンティ家の礼拝堂を捜査するように命じる。部下のスポレッタは礼拝堂から、アッタヴァンティ家の紋章の入った扇と、昼食用のバスケットを見つけて来る。また画架の聖女の顔が、彼の妹とそっくりなのに気付いて、スカルピアは彼がここへ逃げ込んだと確信する。そこへ何も知らないトスカが戻って来て、今夜は祝賀会でうたうことになり、デートは中止だと告げに来たのに、カヴァラドッシがいないのでがっかりする。するとスカルピアはトスカに近付き、例の扇をみせつけて彼女の嫉妬心を煽り立てる。彼女は彼が例のモデルの美女と、別荘で逢引しているかも知れないと疑い、現場に直行しようという。スカルピアはすぐにスポレッタを呼び、トスカを尾行するように命じる。彼はにんまりとほくそ笑み、トスカよお前の心の中には、このスカルピアが住み着いたぞと独り言をいう。オルガンが鳴り響いて,枢機卿の行列が通り過ぎる。聖歌隊は「テ・デウム」をうたい、祝砲と鐘が響き渡る。そして枢機卿は人々に祝福を与え、大合唱が大きく盛り上がる。スカルピアはカヴァラドッシを逮捕し、トスカを我がものにしようと決心する。
(C) 出谷 啓
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