Opera Reviews
オペラ評

グルック作曲 アルミーデ
ジュリアードオペラセンター
*1999年11月17日
Gluck『Armide』(Juilliard Theater)

Randall Behr (Conductor), Chas Rader-Shieber (Stage Director), Monique McDonald (Armide), Jennifer Rivera (Phenice), Sarah Wolfson (Sidonie), Brian Leerhuber (Hidraot), Joshua Winograde (Aronte), Don Frazure (Renaud), William Ferguson (Artemidore), Raquela Sheeran (Une Naiad), Bangsool Kim (Une Bergere), Kaghleen Flynn (La Haine), Giovanni Secondini (Le Chevalier Danois), Randall Scarlata (Ubalde), Makiko Narumi (Un Plaisir), etc., Juilliard Opera Orchestra


GluckがLullyの同名のオペラの台本をほぼそのまま使用して作った作品。Gluckの作品の中でも上演されるのは極めて珍しいらしく、METでは過去に2シーズン上演されたのみという。話の筋はArmideという魔女が十字軍騎士を次々と誘惑して虜にしてしまうなか、Renaudだけはなかなか掌中に収めることができず、逆にArmideの方が彼に恋をしてしまうというもの。ついParsifalのKundryを想起させる話である。

舞台は、装置・衣装ともメタリック・レッドを基調としたもの。照明の当て方の問題もあるかと思うが、非常に目の疲れる演出だった。しかし、過激な色彩ゆえに、Armideとその取巻きの持つ妖艶さはうまく表現されていたと思う。

タイトルロールのMcDonaldは、前にLevineのMaster Classで聞いているが、その時に比べて声量、表現力とも格段に進歩していて、十分見ごたえ・聴き応えがあった。ただ、全5幕の長丁場はさすがにきつかったと見えて、最終幕ではかなり疲労が見えた。歌唱陣の中ではLeerhuberが群を抜いていて、圧倒的な存在感があった。ただし、脇役なので出番が少なかったのが残念。侍女役のRiveraとWolfsonはそれぞれの個性を活かしながらも、ちょっとコミカルな感じを出したりして、うまかった。Narumiも豊かな声質でアリアを歌い上げていた(1曲しかないのが残念)。Renaud役のFrazureは声が細かったが、丁寧に歌っており、好感がもてた。全般的にキャスティングはうまくなされており、十分なリハーサルを経たことがわかる、高水準のプロダクションであった。Behrは、全般的に速いテンポをとり、所々駆け足過ぎるのではないかと思わせるような指揮。オーケストラ・歌唱とも古典奏法とはほぼ無縁で、一部初期Verdiかと思ってしまうような盛り上がりを見せた演奏だったが、そのエネルギッシュさ故に曲自体に生命が吹き込まれたのは事実。

(イーグルのNYオペラ情報から、ご厚意により転記しました。)

◆プーランクのカルメン会の対話の公演批評はこちら


HOME | INDEX