2002年10月26日(土)
好評のホールオペラ『TEA』公演のサイドストーリー〜コントラルト:鳴海真希子の急逝(クラシック・ニュース)

現在、好評で公演が行われているホールオペラ:タン・ドゥンの『TEA』にまつわるサイドストーリーがあった。

これからの活躍を期待されていたコントラルト:鳴海真紀子が、2002年4月30日に軟部肉腫のため亡くなった。鳴海真希子は2002年10月22、24日サントリーホールでの『TEA』に、「陸」の役で出演を予定していた。作曲者タン・ドゥンのニューヨークにおけるオーディションで、「陸」にピッタリ、ふさわしい歌手として認められ出演が決まっていた。しかし彼女の死のよって、「陸」には新しくヨーロッパの歌劇場で活躍する中国人のニン・リャンに変わることを余儀なくされた。

鳴海真希子は2001年8月出演先のアスペン音楽祭で発病し、ニューヨークで治療を受けていた。2002年3月に帰国して相模原の北里大学付属病院で治療に専念したが、薬石の効なく4月30日午後9時45分ついに帰らぬ人となった。最後まで生きることに望みを持って病と闘った。
彼女は岩手大学、東京芸大さらに芸大の大学院からジュリアード音楽院に留学、ジュリアード オペラセンターで研修を積んだ。98年夏、コロラド州アスペン音楽祭ではヴェルディ『ファルスタッフ』のクイックリー夫人でオペラにデビューした。そしてタングルウッド音楽祭ミュージックセンターでも、全米オーディションに合格して、小澤征爾の指揮でクイックリー夫人を演じて高い評価を得ていた。ヨーロッパでもシュトゥトガルト歌劇場で、モンテヴェルディ『ポッペリアの戴冠』でデビューを果たすなど、注目株としてその活躍が期待されただけに、その死を惜しむ声が高い。

◆鳴海真紀子CD『鳴海真希子リサイタル』
◎パーセル:しばしの音楽/夕べの賛歌
◎フォーレ:或る一日の詩
      出会い/永遠に/別れ
◎ブラームス:教会墓地にて/失望/サッフォー風頌歌/永遠の愛について
◎マーラー:「子供の魔法の角笛」より
 美しいトランペットがなり響く所/この世の生活/原光
◎團伊玖磨:「六つの子供のうた」より
 いたち/秋の野/雪女
◎ファリャ:七つのスペイン民謡
◎ロッシーニ:オペラ「アルジェリのイタリア女」より
 むごい運命よ!愛の暴君よ!
◎團伊玖磨:紫陽花
◎ビゼー:オペラ「カルメン」より セギディーリャ
◎山田耕筰:中国地方の子守唄
アルト:鳴海真希子
ピアノ:トーマス・ホッペ

2001年6月23日津田ホールでおこなわれた鳴海真希子リサイタルのライブCDが残されている。彼女の深みのある声は、その可能性を感じさせる素晴らしい独唱となっている。

文●藪田益資 (クラシック・ニュース プロデューサー)
[クラシック・ニュース 2002年 10月 26日]


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