ジョゼフ・モーリス・ラヴェル
Ravel, Joseph Maurice
仏 1875 - 1937
作曲家。バスク地方フランス側のシブールに生まれる。父はサヴォワ出身の技師、母はバスク人であった。
1882年からアンリ・ギーにピアノを、後にシャルル・ルネに作曲を師事する。1889年、パリ音楽院に入り、ベリオにピアノを、ペサールに和声学を師事。パリ万国博覧会で出会ったカンボジアの寺院、タヒチの踊りやインドネシアのガムランなどに大きく影響される。
1897年からアンドレ・ジェダルジュに対位法とフーガを、フォーレに作曲を師事。
1898年、2台のピアノのための「耳で聞く風景」を国民音楽協会で発表、作曲家としてデビュー。同年のピアノ曲「亡き王女のためのパヴァーヌ」も評判となる。
ローマ賞に何度も応募するが大賞は取れず、1905年、再び挑戦、予選で却下される。しかし落選理由の不純さはパリ音楽院の愚かしい行為だとして周囲から抗議が起こり、スキャンダルとなって、院長デュボワが辞任に追い込まれるまでに至った。これをラヴェル事件という。その後フォーレが院長となり学校改革に着手する。
1909〜12年、ディアギレフのロシア・バレエ団のために「ダフニスとクロエ」が書かれ、これは「ボレロ」と並びラヴェルの作品中もっともよく知られたものとなる。
1914年、兵役を志願するが不適格となり、1917年まで自らの希望でトラック運転手として軍に服務。
1926年、スカンジナヴィア諸国へ、1928年には米国とカナダを訪れ、英国ではオクスフォード大学で名誉博士の学位を授与される。
1932年、自動車事故で脳障害となり、以前からの神経症が悪化、麻痺の症状も出、晩年の生活は不自由なものであった。
シャブリエ、サティ、シューマン、ショパンらの他、ドビュッシーから特に「牧神の午後への前奏曲」より大きな影響を受けるが、独自の作風を確立、教会旋法や五音音階も用い、簡潔な和声、リズム、形式に基づき、新古典主義的スタイルの作風。自身の生まれによるスペイン的なものへの傾倒もみられる。ピアノ曲ではヴィルトゥオーソ的スタイルで、透明感のある高音域、細かな連打、オーケストラ的効果を持つが、それより前の時代のヴィルトゥオーソ的ピアノ曲の特徴であったオクターヴのパッセージはみられない。
印象主義の中で過ごし、以前は印象派の作曲家と目されたが、現在では印象派のスタイルによるものはごく一部の作品ということで、印象派の代表のような扱いは減っている。 精緻な書法は、管弦楽の魔術師、スイスの時計職人とも呼ばれる。
作品:
◆ピアノ
グロテスクなセレナード Serenade grotesque
古風なメヌエット Menuet antique(1895、1929年にオーケストラ編曲)
亡き王女のためのパヴァーヌ Pavane pour une infante defunte
水の戯れ Jeux d'eau
鏡 Miroirs
ソナチネ
夜のガスパール Gaspard de la nuit
高雅で感傷的なワルツ Valses nobles et sentimentales
クープランの墓 Le tombeau de Couperin
◆室内楽
演奏会用狂詩曲「ツィガーヌ Tzigane」
ピアノ・トリオ イ短調
弦楽四重奏曲 ヘ長調
◆管弦楽
スペイン狂詩曲 Rapsodie espagnole
ダフニスとクロエ Daphnis et Chloeより2つの組曲
舞踊交響詩 ラ・ヴァルス La valse(1919。1921年に2台ピアノ用に編曲)
演奏会用狂詩曲 ツィガーヌ Tzigane(ヴァイオリン、オーケストラ。ヴァイオリンとピアノのための版の編曲)
ボレロ Bolero
左手のための協奏曲 Concerto pour la main gauche
ピアノ協奏曲 ト長調
◆自身のピアノ曲からのオーケストラ編曲版
亡き王女のためのパヴァーヌ Pavane pour une infante defunte
鏡 Miroirs より第3番 洋上の小舟 Une barque sur l'ocean、第4番 道化師の朝の歌 Alborada del gracioso
高雅で感傷的なワルツ Valses nobles et sentimentales
4つの断章(クープランの墓 Le tombeau de Couperin より第1、3、4、5番)(1919)
マ・メール・ロワ Ma mere l'oye
◆舞台
舞踊交響曲 ダフニスとクロエ Daphnis et Chloe
ボレロ Bolero
コメディ・ミュジカル スペインの時 L'heure espagnole
ファンタジー・リリック 子供と魔法 L'enfant et les sortileges
◆他の作曲家の作品の編曲
シャブリエ 10の絵画的小品 Dix pieces pittoresques より、荘重なメヌエット Menuet pompeux
ドビュッシー ピアノのために Pour le piano よりサラバンド Sarabande
ムソルグスキー 展覧会の絵 Kartinki s vistavki
作品:管弦楽曲DB
作品:オペラ名曲辞典
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