【あらすじ】
時と所:紀元一世紀・ベツレヘム近郊(パレスチナの都市、キリスト生誕の地)
全1幕 アマールの貧しい小屋
ある冬の夜。足の悪い少年アマールは、家の外で星を眺めながら羊飼いの笛を吹いていた。アマールはかつて羊飼いをしていたが、貧しさのため羊をみな売ってしまったので、母と二人この先は物乞いをして食べていかなければならない。その夜あまりにも星がきれいだったので、アマールはいつまでも星を眺めていたが、母親の「早く家に入って寝なさい!」という言葉に渋々家に入って行った。アマールは母親に「巨大な星が流れて行ったよ。」と今見た不思議な光景の話しをしたが、母親はまたいつもの作り話だと取り合わず、寝床の支度に入った。
二人が眠りにつき暫くすると、誰かが小屋の扉をノックした。アマールが扉を開けるとそこには一人の王様が立っていた。すぐさま家の中の母親に知らせに行くが、母親は王様が来ているなどとは信じられず、もう一度見に行くように言った。再びアマールが扉の外を見に行くと、そこには三人の王様と、沢山の荷物を持ったお付きの小姓たちがいた。それを聞いて慌てて出てきた母親は、すぐに王様たちを家の中へ招き入れた。王様の一人メルヒオール王が「特別な星の行方を追っている途中なので、少しの間休ませていただくだけです。」と長居しないことを伝えると、アマールは自分の見た星の話が本当だったと得意げになった。母親はそんなアマールを制し、暖を取るための薪を取りに出かけた。バルタザール王がアマールに身の上を尋ね、アマールが貧乏な自分の身の上を語ると、今度はアマールが王様たちを質問責めにした。アマールはこの突然の出来事に心を踊らせていたのだ。耳の悪いカスパール王は何度も質問を聞き返しながら、アマールが興味を持った宝石箱のことをユーモラスな曲で歌いながら説明した。<これが私の宝石箱 This is my box> 薪を持って戻ってきた母親が、今度はアマールに近所の羊飼いたちの所に、もてなしの食べ物を取りに行くよう命じた。母親が王様たちにこの沢山の荷物は何かと尋ねると、それは東の星が導く先にいる、選ばれし幼子の所へ持って行く贈り物だと言う。<王様たちと母親の四重唱> そこへアマールが羊飼いたちや村人たちを連れて戻り、ささやかな食べ物と踊りで王様たちをもてなした。
夜が更け近所の者たちが帰ると、アマールたちも寝る支度をして眠りについた。ところが母親は近くに置かれた贈り物が気になってなかなか眠れない。そしてあの中の金の一片だけでもあれば少しは生活が楽になるだろうと、ついつい宝石箱に手を出してしまった。するとそれを従者の一人に見つかり、母親は取り押さえられてしまう。騒ぎで飛び起きたアマールは、泣きながら盗んだのは自分だと、お母さんをいじめる奴はやっつけるぞと松葉杖を振り上げた。始めは驚き怒っていたメルヒオール王も、アマールの母を思う気持ちに感動し、母親に何でも好きな物を取るように、訪ねて行く幼子には愛を捧げるだけで十分だろうと言った。母親が自分の罪深さを悔いこの申し出を辞退すると、アマールは自分の松葉杖を贈り物としてその子に持って行ってと差し出した。すると不思議なことに、アマールの悪かった足は治ってしまった。皆は神の力による奇跡だと驚き、アマールは家中踊り回った。<王様たち、従者、アマールの五重唱> そして自分も一緒に贈り物を渡しに幼子の所へ行きたいと、王様たちに申し出た。
旅立ちの時...母親はいつまでも息子を見送り、アマールの羊飼いの笛の音(冒頭に出てきた曲の再現)が次第に小さくなり...消えてゆき...幕となる。
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