オペラ「ナクソス島のアリアドネ」は始まった。
ギリシャの孤島ナクソス島の洞窟。背後には美しい海が見える。アリアドネは三人のニンフに見守られ眠っている。彼女は恋人テーセウスに置き去りにされた悲しい運命を嘆く。そこにツェルビネッタをはじめとする喜劇の役者達が現れる。ハルレキンが陽気な歌を歌うが、アリアドネの気持ちは落ち込み、アリア「ひとつの国がある」と絶望を歌う。喜劇役者達は陽気な踊りと五重唱で励ますが、まったく効果はない。そこでツェルビネッタは、アリア「偉大な王女さま」で、コロラトゥーラの超絶技巧を駆使して、女心は春の空、新しい男を見つけよう!と説くが、これまたアリアドネの心を救うことは出来ない。トランペットが鳴り響き、三人のニンフが慌ただしく入ってきて、一隻の船の到着を告げる。若く輝かしいバッカスが登場する。アリアドネはバッカスは死の国の使者と思い、またバッカスもアリアドネを妖女かと思う。アリアドネは自分が死の国へ連れ去られることを望み、バッカスの胸に身を投げ出す…しかし、バッカスのキスで彼女の苦悩は一瞬に消え去り、甘美な愛の恍惚に変わってしまった。バッカスは死の神ではなく、愛の神であった。ツェルビネッタが舞台横で見守り、三人のニンフの歌声に官能的な管弦楽が絡み合う中、二人はゆっくりと姿を消す。(幕)
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