【あらすじ】時と場所16世紀、ローマ
第1幕
第1場 ローマ、バルドゥッチの家、告解の火曜日の前日
教皇クレメンス七世がペルセウスのブロンズ像を建立するにあたり、評判の彫刻家のベンヴェヌート・チェッリーニに制作を依頼した。しかし教皇財務官ジャーコモ・バルドゥッチは、教皇のお抱え彫刻家で娘テレーザの求婚者フィエラモスカを推していたので、この決定に不満である。一方教皇ご指名の栄誉を賜ったチェッリーニは怠け者の好色でちっとも制作に精を出さないため、教皇からは矢の催促でバルドゥッチはもううんざりしていた。その上娘テレーザはどうもチェッリーニに想いを寄せているようなのだ。そんなバルドゥッチの苛立ちをよそに、テレーザは楽しげにお祭のパレードを見つめている。するとチェッリーニから手紙と花束が投げられ、テレーザは心をときめかして「愛と義務のあいだで」と揺れる乙女心を歌う。手紙の約束通りに現れたチェッリーニは早速愛を語り、テレーザはすっかり舞い上がる。そこにテレーザのご機嫌伺いにやって来たフィエラモスカが、仲睦まじげな二人を見つけ、物陰に隠れ様子を窺う。しかし二人は気がつかず「明日の晩、カサンドロ一団の興行見物に押しかける群衆に紛れて駆け落ちしよう」と話し合う。そしてチェッリーニは白い修道衣、助手のアスカーニオは茶色の修道衣を纏って迎えに行くから、一緒に逃げようと誘う。愛の成就を歌うテレーザとチェッリーニに、陰に隠れたフィエラモスカが加わり「明日の晩、謝肉祭の火曜日」を三重唱する。すると予想外に早くバルドゥッチが帰宅する。テレーザは機転を利かせ「寝室に誰かいるの!」と叫び、その隙にチェッリーニは逃げるが、代わりに部屋に隠れていたフィエラモスカが見つかる。バルドゥッチは「不審者がいる!」と騒ぎたて、駆け付けた町の人々が逃げるフィエラモスカを追って行く。
第2場 告解の火曜日、酒場
喉の渇きを癒そうと彫金職人達が酒場に集まって来る。チェッリーニは愛しいテレーザを想い「栄光は唯一私の憧れだった」と歌う。職人達は彼らの芸術を称え「彫金師達に栄光あれ」と高らかに合唱する。そして追加のワインを次々と注文するが、酒場の店主は「今までの付を精算してからでないと、もう酒は出さない!」と突っぱねる。そこに丁度チェッリーニの助手アスカーニオが教皇から下賜された制作資金を持って現れる。しかし資金はほんの僅かで、酒屋の付を払うのが精いっぱいだった。怒ったチェッリーニはケチな財務管理をするバルドゥッチを皮肉った芝居をかけるよう芝居小屋に掛け合う。一方フィエラモスカは、友人の刺客ポンペーオを頼み、チェッリーニと同じ修道衣を着てテレーザを誘拐しようと企む。
第3場 ピアッツァ・コロッナでのお祭り
夕暮れになり人々は芝居を見に集まり、バルドゥッチもテレーザを連れて現れる。芸人達の呼びかけに合わせ人々が踊り、祭りが盛り上がる中、いよいよ芝居が始まる。ロバの耳をつけて登場した役者がバルドゥッチをあからさまに当てこすり、人々は熱狂する。一方公衆の面前で愚弄されたバルドゥッチは激怒して楽隊になぐりかかる。そこに計画通りチェッリーニと助手のアスカーニオが修道士姿で現れ、テレーザを連れ出そうとするが、フィエラモスカとポンペーオも同じ修道衣を着て乗りこんで来るので、テレーザはチェッリーニを見失ってしまう。すると横恋慕に腹を立てたチェッリーニは刺客ポンペーオと格闘し、殺害してしまう。見物していた人々は騒然となり、殺人犯を捕えようとする。ちょうどその時サンタンジェロ城から謝肉祭の閉会が宣言され、一斉に蝋燭の明りが消される。チェッリーニは闇に紛れて逃走し、同じ修道衣を着ていたフィエラモスカが殺人犯と間違われて逮捕される。その隙にアスカーニオはテレーザを安全な場所に連れ出す。

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