時と場所 18世紀中期、ヨーロッパ及び南米
あらすじ
第1幕 ウエストファリアからリスボンそしてパリ
幕が開き人々は「ようこそ飾らない、素朴な町ウエストファリアへ」と歌う。ツンダー・テン・トロンク城のあるこの町で人々は訳のわからない言葉を話し、一年中豚を食べていると言う。そして城主である男爵の従兄弟にあたるキャンディードがこの話の主人公である。彼はでっぷり太った男爵夫人や虚栄心の塊のようなその息子からは全く評価されていなかったが、美しい男爵令嬢のクネゴンデだけは彼を愛してくれた。無邪気な目をしたクネゴンデがいる限りキャンディードは幸せだった。ところでこの町にはパングロス博士という楽天主義を唱える哲学者がいた。博士は男爵家の小間使いでうわさ好きの小娘パケットと、人気のない公園でいちゃつく様な人物ではあったが、町の若者は彼を信奉していた。ある日キャンディードはクネゴンデを愛し結婚を夢見ていることを告白する。すると非嫡出子の従兄弟で社会的地位もないキャンディードが、ウエストファリア家の娘を辱めたとして男爵一家は激怒してしまい、キャンディードは城から追放されてしまう。仕方なくキャンディードが野宿をしているとブルガリア軍に強制徴兵され、脱走を図るが、捕えられ鞭打ちの刑を受ける。やっと彼が歩けるようになった時、ブルガリア軍は戦争を始めウエストファリアは戦場となる。男爵夫妻、息子のマクシミリアン、小間使いパケット、そしてパングロス博士までも虐殺され、娘のクネゴンデは銃を突きつけられ何度も辱めを受けて殺されたのである。キャンディードは廃墟の中で愛するクネゴンデを探し回るが、彼女の遺体さえ見つける事は出来なかった。時は過ぎ、天涯の孤独と飢えに苦しむキャンディードは哀れな乞食に出会い、なけなしのコインをめぐんでやる。乞食の鼻はブリキで繕われ、何本かの指は梅毒で腐り落ちていた。しかしよく見ると、その男は虐殺されたはずのパングロス博士であった。パングロスは遺体解剖所で解剖された際、ナイフの痛みで蘇ったというのだ。パングロスの楽天主義はますますゆるぎないものとなり、再会を喜ぶキャンディードとともに新天地を求め、リスボン行き商業船の乗組員となる。航海中に30万人が亡くなる程の火山の噴火に遭遇するが、それでもパングロスは「全ては最善の方向にある」と信じて疑わなかった。しかし二人は到着したリスボンで異端者として逮捕され、パングロスは縛り首になり、キャンディードは鞭打ち刑になってしまう。
話は変わり、その頃パリでは謎めいた美女が金持ちのユダヤ人と大司教を虜にしていた。ユダヤ人は火曜日と木曜日とユダヤ教の安息日に、大司教は水曜日と金曜日とキリスト教の安息日に美女と会うのである。愚かな二人の男達は土曜の夜になると、ユダヤ教とキリスト教の安息日の定義について口論するのだった。驚いたことにその謎めいた美女はクネゴンデで、幸運な偶然によってパリにやって来たキャンディードと巡り会うのである。しかし感激の再会もつかの間、謎の老婆が現れユダヤ人と大司教が追って来ると警告する。キャンディードは慌てふためき、現れた二人を刺殺し、大司教を大聖堂に埋葬し、ユダヤ人を近くの下水道に投げ込むとスペイン南部のカディズに逃亡する。逃避行の中で謎の老婆は「私はローマ法王の娘だ」と名乗り、妖しい身の上話をする。結局三人は警察に逮捕され、異端審問にかけられる。キャンディードは南米のイエズス会のために戦う任務を受け入れ、クネゴンデと老婆の通行許可を得て、南米に向けて出発する。
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