歌劇「カルメン」(ビゼー)
時と場所:1820年頃。スペインのセヴィーリャ
あらすじ-第1幕
有名な前奏曲で悲劇の結末が暗示された後、スペインのセビーリャの町の広場の場面になり、片方にはタバコ工場、もう片方には衛兵の詰め所がある。詰め所では、伍長のモラレスや兵隊たちが所在無く通行人の品定めなどをしている。そこへ、田舎娘のミカエラが、おずおずとした様子で姿をみせる。彼女は恥ずかしそうに、ドン・ホセに会いに来たと言う。モラレスは、もうすぐ交替の時間でホセはここへ来るから、しばらく待つように言う。しかし彼女はまた改めて来るといって退場する。
すると遠くでラッパが鳴り、それに応えて詰め所の兵もラッパを吹く。軽快な鼓笛の行進曲に合わせて、町の子供たちと交替の兵隊たちが現れる。こうして隊長スニガの前で衛兵の交替が終わり、ドン・ホセの率いる兵が警備につき、モラレスは部下を率いて去る。
しばらくしてタバコ工場から昼の休憩を告げる鐘が鳴り、女工たちがタバコを吹かしながら出て来るので、町の若者たちも寄り集まって来る。そこへ、カルメンが颯爽と登場する。紅い花を一輪弄びながら、妖艶に男たちへ鼻歌を歌いかける。だがホセだけは、それにはまったく無関心で、銃の手入れなどをしている。カルメンはそうした彼の姿に惹かれ、近づくと笑いながら有名な「ハバネラ」を歌い出す。「恋はちょうど野鳥のようなもの、自由に馴らすことは出来ない。恋は気ままなもの、そちらはいやでも、こちらは好き」カルメンは歌い終わると、その紅い花をホセに投げつけ、笑いながら去る。そのとき前奏曲の悲劇を暗示する、運命の動機が流れる。
間もなく始業の鐘が鳴り、一同は仕事に戻り、舞台にはホセだけが残る。彼はカルメンの歌を聴いて胸の高鳴りを覚え、地に落ちている紅い花を拾い、そっとポケットの中に入れる。ミカエラがやって来る。彼女はホセの母から預かって来た手紙と小遣いを渡し、二人はぎこちなくキスをする。そして美しい二重唱になる。ミカエラが急いで帰った後、ホセは母親の手紙を読み、この清らかな娘と結婚しようと決心する。そしてポケットの中の紅い花を捨てようとすると、突然工場の中が騒がしくなる。工場では喧嘩が始まり、カルメンがマヌエリータを傷つけたのである。女工たちは外に出て来ると、二組に別れてお互いを罵り合う。ホセはカルメンを引き立てて来るが、彼女は鼻歌を歌いながら、ふてくされた態度をとるので、隊長のスニガは彼女を牢にぶち込めという。カルメンは後ろ手に縛られたまま、ホセを誘惑しようとする。そしてこれも有名な、「セギディリア」になる。この歌を聴いてついふらふらとした彼は、思わず彼女の縄を解いてしまう。そこへスニガが令状を手に現れ、カルメン連行の護衛をホセに命じる。カルメンはホセに耳打ちし、牢へ行く途中で自分はあんたを突き飛ばすから、そのまま見逃してと頼む。そしてホセは群衆をかき分けてカルメンを連行するが、筋書きどおり彼女はホセを突き倒し、人々が大騒ぎするうちに、まんまと逃げてしまうのである。
(C)出谷 啓
第2幕へ

RETURN
オペラ名曲辞典TOP