第4幕
セビーリャの闘牛場の周りは、大変な雑踏ぶりである。第1幕の前奏曲の冒頭で演奏された、「闘牛士の行進」が力強く鳴り響き、群衆は「来たぞ、来たぞ」と叫んで、闘牛士たちを歓迎する。いよいよエスカミーリョが大歓声を浴びながら登場する。既に彼の情婦になっているカルメンは、美しく着飾って彼のそばに付き添っている。エスカミーリョが歓呼に応えて入場するが、カルメンは場外に残る。するとメルセデスとフラスキータが、ホセがうろうろしているから気を付けるようにと忠告する。だがカルメンは、気にしていない様子。
彼女が一人になると、案の定ホセが現れるが、彼は見る影もなくやせ細り、目ばかりがぎらぎら輝いている。当然ながら、痴話喧嘩が始まる。「二人の仲はもうおしまいさ」とカルメン、「そう言わずに、よりを戻してくれ」とホセ、すると闘牛場の中から、「エスカミーリョ万歳」の歓声が上がるので、カルメンは入り口に駆け寄る。彼女の前に立ちはだかるホセ、「お前はあいつを愛しているのだな」と、ホセの哀願は嫉妬の憎悪に変わる。激しいやり取りのあいだにも、「運命の動機」が何回も鳴り響く。カルメンはホセに貰った指輪を投げ返す。ホセは逆上して、短刀を抜き放つ。そして彼女の胸を一突き、カルメンは瞬間朱に染まってその場に倒れ込む。闘牛場からは試合の興奮に酔った観衆が出て来て、その凄惨な場面に出会って立ちすくむ。「俺が殺したんだ、いとしのカルメン」ホセは叫ぶと、カルメンの亡骸の上に泣き崩れる。(幕)
(C)出谷 啓

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