渡し守は舟を漕ぎながら<今日は大事な日なのですToday is an important day〉と口を開く。1年前のちょうど今日、異教徒の北国人に連れられたキリスト教徒の12歳になる少年がいた。異教徒の男は奴隷として買って来たのだと言っていたが、少年は病気で弱っており歩けなくなってしまったので、異教徒の男は少年を置いて行ってしまった。置き去りにされた少年を見て、近所の人々は憐れに思い介抱してやったが、その甲斐もなく死んでしまった。少年は死ぬ前に僕は黒山の麓の貴族の独り子で、父は死に、母と一緒に暮らしていたが、見知らぬ男に脅されて連れてこられた、もう自分の死期が迫っていることを知っている故、僕をこのチャペルの小径のそばに埋めて下さい、そうすれば故郷から来た旅人の影が僕の墓の上に落ちるでしょう、そして僕の思い出にイ千イの樹を植えて下さいと言い事切れた。近所の人々はその子が聖者だと信じ、その墓にお参りすれば、御利益があると信じて、お参りする人が絶えないのだと物語る。舟は対岸に着き、人々は舟を降りて、私たちも墓参りをしていこうと墓の方に行く。狂女は舟に残り泣いている。渡し守がさあ岸にあがりなさいとうながすと狂女はその子の歳は、名前は、出身はと問いただし、母親も訪ねてこなかったかと言う。渡し守が誰も乗なかったと答えると、そうであろう、その子の母はこの狂女なのだと言う。人々はそれをきいて彼女を哀れむ。狂女は<カーリュウ河よ、酷いカーリュウよO Curlew River, cruel Curlew〉ここで私の希望の総てが流されたのかと嘆く。渡し守は狂女を墓の前に連れていってやる。狂女は私は生きている息子の顔が見たいばかりに捜し歩いていたのにと慟哭する。渡し守は泣くより祈ってあげなさいとさとすが、狂女はこの悲しみに祈れるか、今は泣くことしかできないと泣き伏す。すると墓から子供の亡霊が現われ、母上やすらかにあなたの道をお進み下さい、死者は再びよみがえります、私たちは天国でお逢いしましょう、アーメンと言って消える。狂女は完全に正気に戻り、跪いて墓に祈る。修道院長は奇蹟劇が終わった事を告げ、修道士たちはまたもとの姿に戻り無伴奏聖歌を歌いながら行列を作って退場する。(幕)
(C)東京オペラプロデュース

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