あらすじ
だます者とだまされる者、だましたつもりの者とだまされたふりをする者が織りなす─ ふしぎなお芝居。
これは昔々のスペインでのお話だろうか?それとも、もしかすると─?
旅回りのイカサマ芝居の一行が、ある村に到着する。座長のチャンファッリャとその妻チリノス、それに傭われ楽師の三人だ。
村では長官、村長以下のお偉方が総出で一行を迎える。チャンファッリャは、「奇蹟芝居」の説明を始める。奇蹟芝居とは賢者ピンセーロが考案したもので…と、でたらめな由来をさも権威あるもののようにまくし立て、「異教徒の血が混じっている者」と「私生児として生まれた者」には、この芝居に出現する奇蹟の姿形を見ることができないのだ、と告げる。これを聞いた人々は非常に驚き動揺する。なにしろ、もしもその姿が見えなかったら、そしてそのことが他人に知れたら、大変なことになるのだから。
長官は、参事の娘の婚約式を今夜行い、その席の余興として、この奇蹟劇を上演することを命令する。座長が奇蹟劇を見る者の資格について念をおすのに対して、人々は自分が由緒正しい「血筋」で祝福を受けた「生まれ」の者だから大丈夫だと答える。
舞台転換のための音楽の後、いよいよ奇蹟芝居の始まりだ。楽師がコントラバスを弾き出すと、座長がピンセーロに呼びかけて、奇蹟の姿の出現を勧請する。
と、まず現れ出たのは、大力無双の勇士サムソン。サムソンがペリシテ人の神殿の柱を引き倒そうとしている…
次に現れるのは、獰猛な雄牛。全員床に伏せて、危うく難を逃れる…
次に登場するのは一群のねずみ。ねずみはねずみでもノアの箱舟に乗っていたねずみの直系の子孫だ。娘達はスカートの裾をおさえて、ねずみがスカートの奥深く侵入するのを防ぐのに大わらわ。とうとう村長の娘は、ひざにかじりつかれて気を失ってしまう…
次には滝。この滝は、実は聖なるヨルダン河の水源でその水で顔を濡らすと、女の顔は銀に、男のひげは金に変化するのだ…
次なる登場は、洗礼者ヨハネの首を失わせた踊りで有名なヘロディアス(聖書の記事ではサロメのはずだが、田舎回りのインチキ芝居にありがちな間違いなのだ)。村長は甥のレポッリョに、彼女と一緒に踊るよう命ずる。
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