【あらすじ】時と場所:共に想像の世界
冒頭、鉄琴の鋭い一撃に続き、語り手が情景を説明する。「昔々、この世界が創造されたとき、その国の夜は真っ暗でした。なぜなら、月の光が届かないくらい遠かったからです。その国から四人の若者が旅に出ました。別の国にたどり着き夕刻になると、町の広場の1本の大きな樫の木に、輝く球が吊るされていました。その輝く球は、太陽ほどは明るくないものの、遠くまで届く弱い光を放ち、夜なのに、なんでも良く見えました。」と、ここまで語り手が話す。
(4人の若者の軽快なアンサンブルで本来のオペラがスタートする)四人の若者は輝く球をみて「あれは何だ?」と農夫に尋ねた。農夫は「月だよ、俺達の村長が3ターレルで買ってきたんだ。毎日明るく照るように磨く手間がかかるけど、磨き賃として、村長が毎週1ターレルくれるんだ。」と答える。四人の若者は、自分たちの村にも、その「月」があったらさぞよかろうと相談して、荷車に乗せて持ち逃げしてしまう。一方、盗まれた国では、大騒ぎとなる。
四人の若者は「月」を自分達の村に持ち帰るが、皆その効果に半信半疑だ。そこで「よく磨けば、夜も明るい。」と説き、首尾よく磨き賃として週に1ターレルもらえる事になった。ついにこの村の樫の木に「月」が吊りさげられた。明るくなった夜に喜ぶ人々のメロディーと、「月」を盗まれた村人たちの怒りを表すメロディーが並行して流れる。
いつしか年月が流れ、四人の若者も老人になった。四人のうち一人死ぬたびに、遺言により、それぞれの「月」の取り分である4分の1を切り取って、棺おけに入れていく。四人が死ぬとその村は、再び真っ暗になってしまった。
死者の世界では、四人の棺の中にある「月」のかけらを集めると、元の明るい「月」になった。しかし、永遠の眠りについていた死者は、この明かりで一斉に起きだし、低い声でうめき、<いったい、この光は何なのだ?>「Was ist das fuer ein Licht?」とくり返し、どんちゃん騒ぎが始まる。四人は、死者たちに「月が大切ならもっと静かにしてくれ」と言うが、死者たちは一向に耳を貸さないばかりか、喧嘩を始める。四人はあきれて「月」を消してしまう。しかし、月を灯せという死者たちと大騒ぎになる。この騒ぎは、ついに天国の聖ペテロの耳にも達し、ペテロは角笛をもって死者の世界の見回りにやってくる。ペテロが雷を落すと、さすがに死者たちも静まり、四人は再び「月」を灯す。ペテロもまたこの「月」に興味をもち、<いったい、この光は何なのだ?>「Was ist das fuer ein Licht?」とたずねる。再び明るくなり起きだす死者たちに、ペテロは、こうなったらとことん騒ごうと言う。いぶかる死者たちだが、杯を重ねると、次第にペテロの魔法にかかりおとなしくなっていく。ペテロは「光は生きている者の為にある。お前達の寿命はとっくに終わっている。もう眠れ」と言いながら、月の光を少しずつ弱めていく。
冒頭の語りが、こうしてペテロが死者たちを眠らせ、天国へ帰り、月を天に吊るしたようすを語る。そこに、寝巻きを着た子供が登場、<あ!あそこにお月様がかかっている!>「Ah, da haengt ja der Mond!」と月をみつけて感嘆の声。死者たちの静かな寝息が低音楽器で聞こえて幕となる。
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