【あらすじ】
時と場所:中世、中部ヨーロッパ
<全1幕>
純金の*臼を見つけた農夫は、王様に献上しようとするが、娘に「臼と一緒に使う*杵も欲しいと言われるに決まってるからやめた方がいい」と忠告される。案の定、褒美どころか杵がないため投獄されてしまう。その娘の話を耳にした王様は、賢い娘だと思い、娘を連れてこさせた。王様は、本当に賢いかどうか、早速この娘に三つのなぞを出す。「ひとつ。馬にも乗らず、歩いてもこず、空を飛んできたのでもなく、客が宿に入ると窓から零れ落ちたものはなにか?」賢い娘は即座に答える。「それは漁師が漁から帰ってきて、窓辺で網を干しているのです。」 王様は二つ目の謎を掛ける。「象牙でできた小鳥で、国中に舞い降り、家屋敷も百姓も、何もかも食べてしまうものはなにか?」 賢い娘は答える。「私は象牙でできた小鳥を知っています。国中の男がさいころ遊びで、人生を破滅してるでしょ。」王様は最後の謎を掛ける。「水の上に臼が流れてきた。そこに3人の男が来る。目が見えない男と、足が立たない男と、裸の男だ。目が見えない男がウサギを見つけ、足が立たない男が捕らえ、裸の男がそれをポケットに入れたのはなぜか。」 賢い娘は答えた。「そういう風に、あり得ない事を<嘘>と言うの!」娘は三つとも正しく言い当てたので、王様はすっかりこの娘が気に入り、妃にするという。賢い娘は、捕らえられている父を放免してくれるならと交換条件を出し、王様は、牢屋にいるみんなを放免すると応えた。そこに、*ラバ(雄のロバと雌の馬との雑種)を引く男と、三人の浮浪者が王様に裁きを願い出る。ロバを引く男が「自分のロバが子を産んだのに、ラバを引く男が(ラバは不妊で仔を産めるはずがないのにもかかわらず)ラバの子だと言って横取りした」と訴えた。しかし、賭け事に負けて不機嫌な王様は、どうでもいいかのように、「ラバの子にしろ」と適当な裁きを下してしまう。それを聞いた三人の浮浪者達は、その判断に納得できず、王様は権力をほしいままにしていると大騒ぎをする。そこにロバ引きの男が網を引きずって現われ、王様の言うように雄のラバが仔を生むのなら、陸で魚がとれないはずがないと言っていやみを言う。王様は、「これはきっと自分の妻である賢い娘(妃)が、ロバ引く男を同情して知恵を与えたにちがいない」と思い、大いに怒り、賢い娘を追い出そうとする。
城では、妃(賢い娘)が食事の支度をして待っていたが、王様は「大切なものだけ持ってゆくことは許すから、出て行け。」と命ずる。賢い娘は、最後に食事だけ召し上がってくださいと頼む。娘は、王様が口にしたその食事に睡眠薬を入れていた。知らずに食べてしまった王様は眠り込み、その間に娘は、*長持ち(衣服などを入れる箱)の中に王様だけを入れ、城を立ち去った。目を覚ました王様は、ここはどこだ?と妃に聞く。「大切なものだけ、その長持ちに入れて持っていってもいい、とおっしゃられたのは王様です。世の中では、賢さと愛情を両立することはできません。」と、妃は答える。それを聞いた王様は、この娘こそ真の賢い女だと感心する。薄暗くなった舞台に、賢い女の父の農夫が、ランプをぶらさげて「とうとう娘も杵を見つけ出したようだな」と呟き、客席に向かって「これが賢い女の物語」と挨拶し、ランプを吹き消し、音楽はトゥッティのpppの和音で静かに終わり幕となる。(幕)
※杵(きね)とは、臼と共に使い、おもに穀物の脱穀や籾摺などに用いる道具
※文中に出てくる「ラバ」とは、雄のロバと雌の馬との雑種の家畜のことである。ロバと違ってラバは、不妊なので仔を生むことができない。
※衣服・調度などを保存しておくための、蓋のある長方形の箱。木製。両端に金具があり、棹(さお)を通して二人でかつぎ、運搬用ともする。
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