【あらすじ】
時と所:19世紀始め・ライン地方のとある村
全1幕/田舎の村
 村長の娘リースヒェンは、18歳の誕生日に恋人のアントンと婚約することになり、喜びで胸がいっぱいだった。その日も早朝から訪ねて来たアントンと共に、愛の二重唱「胸の中から花が咲き乱れるよう Von dem Busen moge bluhen」と歌い、喜びを分かち合っていた。村長が現れアントンと役所へ出掛けている間、朝食の準備をしているリースヒェンの許に突然一人の男がやって来た。男の名はフランツ・シュピース。右目を負傷している。家に戻って来た村長は、男の顔を見るなり驚きで言葉を失った。実はこの男、18年前リースヒェンの名付け親となったのだが「フランスに双子の弟を捜しに行くが、もし18年以内に私が戻って来たらこの娘と結婚させてくれ」と言い、多額の持参金を役所に寄託して姿を消したのだ。村長はまさかもう彼は帰って来ないだろうと思っていたので、娘のために必死で当時の約束を無かったことにしようとするが、フランツは全く聞く耳を持たず「弟が軍にいたようなので私も海軍に入ったが、弟は死んでしまったらしい。役所へ持参金受取りの手続きに行くので、戻ったら約束通り娘さんと結婚させてくれ」と告げ役所へ向かった。あまりのことにリースヒェンは泣き崩れ、事情を知ったアントンは村中の者から自分たちの結婚の同意を貰いに行こうとその場を離れた。
 そこへフランツの双子の弟フリードリッヒ・シュピースが現れる。彼は生きていたのだ。フリードリッヒが久しぶりの故郷を懐かしんでいると、彼を兄のフランツと勘違いした村長が彼に朝食を勧める。見ず知らずの人の親切に感激したフリードリッヒが、和やかに食事を楽しんでいると、リースヒェンがやって来て突然「恋人との結婚を認めてほしい」と訴える。フリードリッヒは何故そんなことを言うのかと不思議に思いながらも「私には妻も子供もいるので、愛する人と結婚したいという気持ちはよく分かりますよ」と優しく答え、それを聞いたリースヒェンは「この方はきっと考え直してくれたのだわ!」と、喜んでアントンを呼びに行く。そこへ役所の会計係が現れ「預かったお金に利息を付けて渡すので、受け取りに来て下さい」と言い、訳の分からない顔をしたフリードリッヒを連れて行く。
 その後兄のフランツが戻り、リースヒェンに食べたばかりのはずの朝食を催促すると、彼女がアントンと結婚することを聞き「約束が違う!」と怒り出す。逆に村長も「最初は海軍の話をしていたのにさっきは陸軍の話になってるし、負傷している目は左右逆になっている…。貴方の方こそ我々を騙しているのだ!」と反論。アントンは再び村人たちに協力を求めに出掛ける。役所の会計係までやって来て「先程渡したお金の書類にサインが無かったので…」と、フランツに貰ってもないお金の話をするので、フランツの頭の中は大混乱。結局フランツは村長に詐欺で訴えられ、裁判所へと引き立てられた。しかしそこへ弟のフリードリッヒが「何故だかお金を渡された」と現れるので、漸く全ての誤解は解ける。双子の兄弟は再会を喜び合い、リースヒェンとアントンも無事結婚できることになった。華やかな五重唱からフィナーレへと続き、幕となる。


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