第2幕
エルヴィラの家の近くの路上、ドン・ジョヴァンニとレポレロが言い争っている。レポレロは昨夜の一件で、仕事がつくづくいやになり、辞めさせて欲しいという。だがドン・ジョヴァンニの方は、金を握らせて巧くなだめる。次のターゲットはエルヴィラの女中で、そのためにはエルヴィラを誘い出し、その留守中に目的を果さなければならない。そこで彼らは、互いに衣装を取り替える。エルヴィラがバルコニーに現われると、レポレロが主人の服装で、彼女の前に現われ、後悔の気持ちを訴えるので、彼女はすっかりその気になり喜んで出て来る。レポレロも主人に成りすまして、声色を使いながら彼女を適当に喜ばせる。
2人が消えた後レポレロに変装したドン・ジョヴァンニの登場で、マンドリンを弾きながら、有名な「セレナード」をうたう。だがそこへ出て来たのはエルヴィラの女中ではなく、マゼットと農夫たちで、相手をレポレロだと思い込んで、ドン・ジョヴァンニの行方を尋ねる。聞かれた彼は適当な方向を教えるが、マゼットが1人になると殴りつけて逃げる。入れ替わりにツェルリーナが現われ、痛めつけられたマゼットを介抱しながら、「哀れなマゼット」のアリアになる。
レポレロはエルヴィラから逃れようと必死だが、そこへアンナとオッタヴィオもやって来る。それにマゼットとツェルリーナまで、連れ立ってくるのでレポレロは絶体絶命。彼はドン・ジョヴァンニの服装をしているので、それが偽者と分かって一同はびっくり仰天、とにかくレポレロは命からがらその場から逃亡する。
場面は変わって深夜の墓地、ドン・ジョヴァンニとレポレロが、これまでの体験を話し合ったりしている。すると殺された騎士長の石像が、お前が笑えるのも今夜限りだとしゃべり出すので、レポレロは恐怖のためガタガタと震え出すが、さすがにドン・ジョヴァンニは毅然として、石像を晩餐に招待する。石像がそれに応じるので、2人は逃げるように墓地を出る。
再び場面が変わって、ドン・ジョヴァンニ邸の大広間。晩餐の用意がすっかり整って、ドン・ジョヴァンニは食事をとっている。宮廷楽団がヒット・オペラのアリアを演奏していて、レポレロも隙を狙って盗み食いなどをしている。すると突然エルヴィラが入ってくるので、ドン・ジョヴァンニは予想外の出来事に驚く。彼女は愛する男に、心を改めるように説得にあらわれたのだが、ドン・ジョヴァンニは聞く耳を持たない。もう何もかも万事休すだと諦めて、エルヴィラは部屋を出て行くが、すぐに悲鳴を上げて転がり込んで来る。さては何が起こったのかと、レポレロがドアを開けると、そこには招待した騎士長の石像が立っているではないか。それをみたレポレロは、歯の根も合わぬほど震え上がるが、ドン・ジョヴァンニはさすがに豪胆で、石像を邸内に招き入れる。石像は悔い改めよと迫るが、ドン・ジョヴァンニは拒絶する。いよいよ最後は大広間に炎が燃え上がり、悪魔の合唱とともにドン・ジョヴァンニは、悲鳴を上げながら地獄へ落ちて行く。その直後にはアンナ、オッタヴィオ、ツェルリーナ、それにマゼットなどが入って来て、レポレロとエルヴィラから今さっき起こった、恐ろしい事件の経緯を聞き、最後にドン・ジョヴァンニを除いた、すべての登場人物が、悪事を働いた者は、すべて末路はこうしたものだと合唱をして、オペラの幕は下ろされる。
(C)出谷 啓
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