第3幕 要塞の斜堤
教会の近く、要塞に置かれた棺台に、戦死したエドガールが全身甲冑に身を包み運ばれて来る。葬儀の行列には一人の修道僧とフランク、フィデーリア、グアルティエーロが続き、仲間の兵士や村の人々もエドガールの死を悼みレクイエムが歌われる。フィデーリアは、悲しみに沈み「さようなら、私の甘い愛」と歌い、フランクは「勇敢なる我らが隊長エドガールには祖国と名誉の二つの名前が刻まれた!」と弔辞を述べる。すると修道僧が「生前エドガールから、臨終の際は自分の罪を明らかにするように命じられていたのです」と歩み出る。そしてエドガールがかつて実家に放火し、フランクを負傷させ娼婦ディグラーナと出奔したこと、そして荒れた生活の果てに、殺人まで犯していたことを明かしていく。葬儀に参加していた人々は「彼に恥辱あれ!カラスの餌食に!」と嫌悪を露わにし、棺台からエドガールの亡骸を引きずり降ろそうとする。堪らなくなって駆け寄って来たフィデーリアは「若さによる過ちを彼は自分の血で、武勇で償いました!」と訴え体を張って棺を守る。人々はフィデーリアに免じてエドガールを許し、葬儀を済ませると教会へ入って行く。そこに人気が無くなるのを見計らって裏手からディグラーナが現れ、エドガールの亡骸に最後の別れを告げる。その様子を見ていた修道僧とフランクはディグラーナの本性を暴こうと申し合わせ、宝石と甘い言葉で罠をかける。初めは祈りの邪魔だとつっぱねていたディグラーナも次第に誘惑に負け首飾りに手を伸ばす。すると修道僧はラッパを吹いて兵士達を呼び集め「エドガールは金の為に祖国を裏切ろうとしたのだ」と作り話をする。ディグラーナは困惑しながらも首飾り欲しさに「その通りだ!」と嘘の証言をしてしまう。それを聞いた兵士達が今度こそエドガールを棺台から引きずり降ろそうと甲冑を掴むと甲冑は蛻(もぬけ)の殻で、兵士達は恐怖に思わず甲冑を取り落とす。すると修道僧が衣装を脱ぎ棄て、なんと兵士姿のエドガールが現れる。フィデーリアは信じられない喜びにエドガールの胸に飛び込んで行く。エドガールはフィデーリアを固く抱きしめ「私は生まれ変わる。栄光よ!邪悪な迷いである肉欲の快楽とは永遠に別れだ!」と宣言すると、二人は手を取り合って歩きだす。しかしその時、いつの間にか背後に回り込んでいたディグラーナが突然フィデーリアを短刀で激しく突き殺してしまう。人々は「娼婦を殺せ!」と叫び、エドガールはフィデーリアの亡骸の上に泣き崩れる。兵士達がディグラーナを連行し、悲しみに沈む人々は祈りを捧げ跪く。(幕)
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