シーン2 宮殿の部屋
罠にかけられているとも知らず、パオロは兄ランチェオットの指示通りに、恋しいフランチェスカを護衛していた。抑え切れぬ苦しい想いを胸に、パオロは「ランスロット卿とアーサー王の妻グィネビア王妃との恋の物語」を朗読する。パオロはこの許されぬ恋の物語に自らの姿を投影し、「二人の愛はこの世のつかの間のものではなく、永遠なのだ」と愛を告白する。フランチェスカはパオロの申し出を、苦しみながらも拒否する。しかし朗読を続けるパオロは、「ランスロット卿とグィネビア王妃が初めてキスを交わした回廊」の場面で、物語に背中を押されるように、フランチェスカを抱き寄せ口づけをする。その「至福の瞬間」、物陰から二人を見張っていたランチェオットがおどりだし、短剣でパオロとフランチェスカを切り裂いてしまう。嫉妬に狂ったランチェオットの残忍な笑い声に送られ、この世の全ての呪いを負って、愛し合う二人は地獄へ落ちて行く。
エピローグ
地獄第1圏
物語は終わり、再び地獄の情景に戻る。呪われた群衆の呻き声が渦を巻き、ヴァージルとダンテを通り過ぎて行った。悲劇の二人が愛しあったほんの僅かな至福の時。二度と戻らぬその瞬間を地獄の底で永遠に思いだし続ける絶望。それがフランチェスカとパオロに課せられた、拷問であった。ダンテが永遠に続く悲しい静寂のなかに佇み、幕が下りる。
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