魔弾の射手
第1幕
舞台は30年戦争直後のボヘミア、森に囲まれた村の居酒屋から物語が始まる。若い猟師のマックスが悄然と椅子に座っているが、大勢の農民たちは大騒ぎで、射撃の名手キリアンの腕の良さを褒め称えている。ちょうど射撃の練習が終わったところで、今日は何としたことか、村中で一番といわれるマックスに、さっぱり調子が出なかったのである。キリアンはすっかり優越感に浸って、恐れ入ったろうと自慢する。余りの屈辱に頭に来たマックスは、キリアンにつかみかかろうとする。そこへたまたま通りかかった護林官クーノーと、狩人たちが仲裁に入るが、クーノーはマックスの不調を聞かされて不思議に思う。というのはクーノーの娘アガーテと、マックスはかねてから恋仲であった。
だが彼らが結婚するには、この村の伝統として、マックスが射撃大会で、優勝しなければならない。しかもその大会は、明日に迫っているのである。マックスは絶望的になり、クーノーは必死に彼を慰める。また腹黒い狩人のカスパールが、加わって三重唱になる。次いで村人たちがダンスを始め、マックスが「森を過ぎ、野原を越えて」というアリアをうたう。この一月ばかりぜんぜん弾が命中しないので、「天は我を見捨てたのか」とマックスは嘆く。すると彼の後ろで、悪魔ザミエルの影が動く。
マックスがしょんぼりしていると、またカスパールが近づいて来て、無理矢理マックスに酒を飲ませようとする。そして絶望的な気分になっているマックスに付け込んで、言い伝えどおりの百発百中の魔弾を手に入れ、大会に出場したらどうかと誘いかけてくる。そしてマックスに一発の弾丸を渡して、空を飛んでいる鷹を撃たせる。それが見事に命中するので、ぜひその弾が欲しいとマックスはいう。カスパールはにんまりと笑って、今夜は皆既月食になるから、魔弾作りにはぴったりだ。真夜中きっかりに、狼谷へ来い。絶対誰にもいうんじゃないというので、マックスはその場を去る。その直後にカスパールは、不気味なアリア「誰も気がつかないように」をうたう。マックスが彼の罠にかかったことを喜ぶ。
(C)出谷啓
つづく
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