楽劇ニューベルングの指輪三部作
Der Ring des Nibelungen
第三日神々の黄昏
Goetterdaemmerung
リヒャルト・ワーグナー
Richard Wagner
4時間30分(120,70,80)
作曲:1869-74/初演:1876年8月17日バイロイト祝祭劇場
台本:作曲者
時所:神話時代
楽器編成:
4Fl(2Pic),4Ob(EH),4Cl(Bs-Kl),3Fg(K-Fg)/
8(4Wagnertuba2T2B),3Tp,bs-Tp,3Tb,Kb-Tb,Tub
2Tim,Tgl,Cym,TD,Glock/6Hp
【概説】
《ニーベルングの指環》四部作の最後を飾る《神々の黄昏》は、当初「ジークフリートの死」として四部作の中で最初に構想された作品だった。そのため《指環》の壮大なドラマの核心部分は、この作品にあり、それ以前の3作は長大な前史であると言うこともできる。そもそも《ニーベルングの指環》というタイトルは、ドイツ中世の英雄叙事詩『ニーベルンゲンの歌』を連想させるし、特にこの《神々の黄昏》は、ジークフリート、ブリュンヒルデ、ハーゲン、グンターなど、共通の登場人物が多いが、ワーグナーは中世の叙事詩を原作のひとつにしながらも、人物の設定は独自のものに変えている。たとえば叙事詩では、ジークフリートはネーデルランドの王子、ブリュンヒルデはアイスランドの女王、グンターはブルグント王国の王、そして片目の勇士ハーゲンはグンター王の親類で家臣だが、アルベリヒの息子などではない。叙事詩ではジークフリートと並ぶ主要人物である王の妹クリームヒルトは、ワーグナーではグートルーネになって役割は著しく小さくなり、その人物像はむしろブリュンヒルデに取り入れられているという具合である。
四部作の作曲は《ラインの黄金》から順番になされたため、《神々の黄昏》の作曲は最後の円熟期に当たり、音楽的にはライトモティーフの技法が最大限に発揮され、オーケストラ曲として知られた〈ジークフリートのラインへの旅〉や〈ジークフリートの葬送行進曲〉だけでなく、全曲が交響的に充実した作品に仕上がっている。一方で、台本が最初に書かれた名残りとして、二重唱や三重唱、合唱の活躍など、グランドオペラ風の要素もふんだんにあり、ワーグナー作品の集大成という趣きもある。
(C)吉田 真
最終更新:2009年2月10日
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