<第3幕>
第1場/(1幕と同じ)ギリシャ軍の野営地
 祭壇からは「早く生贄を!」という人々の合唱が聴こえる。イフィジェニーの周りにも見張りが付き、アルカスがイフィジェニーを連れて逃げることは、とても出来そうにない。アシルは「例え力ずくでも恋人を護る!」と息巻くが、当のイフィジェニーは「貴方への愛は変わりませんが、私は運命に従い死を覚悟しなければなりません」と言い、「絶対に娘を手放しはしない!」と言う母クリテムネストラにも別れを告げると、呼ばれるがまま祭壇へと向かった。残されたクリテムネストラは、悲しみの余り狂ったように「ジュピター大神よ、この地に雷を放て! Jupiter, lance la foudre」と叫ぶ。祭壇の方からは、生贄を捧げる儀式の合唱が聴こえて来る。
第2場/海岸
 祭壇の設けられた海岸に人々が集まり、イフィジェニーが壇上に跪いている。しかし儀式が始まり、大祭司カルカスが彼女に剣を振り下ろそうとした所へ、仲間を引き連れたアシルが乱入して来た。大混乱の中、アシルは必死でイフィジェニーを救おうとするが、それでもイフィジェニーは「神よ!この身を生贄として捧げます!」と祈り、深く頭を下げている。するとその健気な姿に心を打たれたディアーヌ女神が、皆の前に姿を現すと「生贄はもうよい。その娘が我が神殿の巫女として仕えるのであれば、罪を赦し港に順風を吹かせよう」と告げ、若い恋人たちを祝福し姿を消した。皆は女神に感謝し喜びの歌を歌う(アガメムノン、クリテムネストラ、イフィジェニー、アシルの四重唱「私の心は喜びを抑え切れない Mon coeur ne saurait contenir 」)。ギリシャ軍の船はトロイを目指して出港し、兵士たちは力強く勝利を誓った。(幕)
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