第3幕/船上
ドン・ペドロは妻となったイネスと2人の奴隷を伴い出航していた。彼は「航路は分かっている」と言う奴隷のネルスコに船の舵を全て任せていたが、同船している王室議員のドン・アルヴァルは「ネルスコの行動は怪しい」とドン・ペドロに再三忠告をしていた。しかしドン・ペドロは全く耳を貸そうとしなかった。水夫たちに「アダマストル、深海の王よ! Adamastor, roi des vagues profondes」と、海の伝説を歌って聞かせるネルスコの笑顔の裏には、ゾッとするような何かが隠されている風で、ドン・アルヴァルは背筋の凍る思いがした。するとそこへ一隻の船が近付いて来た。船に乗っていたのはヴァスコで、彼は船の航路の間違いを指摘するために必死でやって来たのだ。ヴァスコは「このまま進めば前回同様船は遭難し、何者かに襲撃され難破してしまう!」と訴えた。彼は愛するイネスを救いたい一心だった。しかしヴァスコが何かを企んでいると思ったドン・ペドロは、水夫たちに「ヴァスコをマストに縛り付け殺せ!」と命じる。騒ぎを聞き付けやって来たイネスとセリカは、愛するヴァスコのために必死でこれを止め彼を逃がすが、その時ネルスコの合図と共に船は沢山の小舟に取り囲まれ、あっという間に船上に乗り込まれ襲撃されてしまう。襲撃したのはセリカとネルスコの母国の者たちで、彼らは2人を救い出すと、折からの嵐と共に座礁した船を背に母国へと帰っていった。
第4幕へ
オペラ名曲辞典TOP