第3場/コンシェルジュリー刑務所内の独房
 カルメル会の修道女たちは牢の中にいた。修道院長のリドワンヌは、不安げに座り込む修道女たちに向かい「皆さんの苦しみや恐怖は、誓願の場にいなかった私が全て引き受けます。誇り高き皆さんには、ただ名誉のみが残りますように!」と言い、優しく「牢獄での最初の夜は終わりました.. Mes fills viola que s'acheve notre premiere nuit de prison」と歌った。皆が心を震わせながら各々の気持ちを噛み締める中、ふと若い修道女のコンスタンスが「ブランシュは何処へいってしまったのかしら..」と呟いた。私にも分からないと言うリドワンヌに、コンスタンスが「ブランシュが戻って来る夢を見たから、きっと彼女は戻って来るはずだわ!」と言うので、皆は笑う。
 そこへ獄史が現れ全員の名前を読み上げると、革命政府の反逆者として修道女たちを全員死刑に処すると言い渡した。獄史が去った後、皆の想いを一つにすべく修道女たちは胸の前で十字を切り、若いコンスタンスは神に想いを馳せるかのように、潤んだ目で遠くを見つめた。
<幕前劇>
 街中でマリーと神父が顔を合わせる。勿論二人共市民服だ。マリーは前の晩知人の家でブランシュを待っていたが、結局ブランシュは現れなかった。マリーは神父から修道女たちが捕えられ死刑宣告を受けたと聞き、自分も早く皆の許へいかなければと走り出すが、神父はそれを制し「きっと神があなたの命を救うことを望んでおられるのですよ!」とマリーの両肩を強く抱く。マリーはその手を振りほどくと「それはとても不名誉なことです!」と言い、その場を立ち去った。
第4場/革命広場(コンコルド広場)
 大勢の市民が集まる中、修道女たちを乗せた馬車がやって来る。彼女たちが降ろされた場所は公開処刑場だった。1列に並んだ聖女たちの顔に迷いはなく、全員で祈るように「幸いなる女王 Salve Regina」(キリスト教聖歌の聖母マリアを讃える歌)を合唱し始める。その中にマリーの姿はなかった。1人ずつ断頭台へ進む彼女たちのために、群衆の中に紛れている神父がそっと十字を切り祈りを捧げる。そしてギロチンのロープが単調に動き始めると、その刃は鋭い光を放ちながら上下に行き来し、美しい歌声を1つずつ消し去っていった。とうとう最後の1人になった時、歌声の主であるコンスタンスは、群衆の中にブランシュの姿を見る。コンスタンスはブランシュに微笑みかけると、次には凛とした面持ちで歌い続け、断頭台へと登っていった。その時..突然群衆を掻き分け、ブランシュがコンスタンスに続き断頭台へ登った。そしてブランシュも「Salve Regina サルヴェ・レジーナ..」と歌いながら、自らの首をその硬い木の上にのせた。鉄の落ちる鈍い音と共に最後の歌声は途切れ、静かに幕が下ろされる。
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