第5幕
第1場 カルタゴの港
港では若い水兵イラスが見張り台の上で帰れない故郷を偲び歌っている。そこに神官パンテーが亡霊の声を聞いたと慌ててやって来る。パンテーは「長居が過ぎたカルタゴを発ち明日イタリアへ出発する!準備せよ」と命令し、トロイア人達は奮い立つ。一方でカルタゴに恋人の出来た二人の兵士は居心地の良い生活への未練を歌う。エネーはディドーンへの愛と使命との間で身が引き裂かれる思いを「ああ、最後の別れの時が来たならば」と歌う。そこにトロイアの王家や自決した預言者カサンドラの亡霊が次々と現れ、エネーにイタリア行きを迫る。ついにエネーは使命を果たす決意をする。早速出航準備に取り掛かり陣頭指揮をとるエネーのもとにディドーンが駆け付ける。取り乱すディドーンは必死でエネーを引き留め、愛を訴える。しかしエネーの決意は固く、使命を果たすために別れなければならないことを詫びる。絶望したディドーンはエネーに呪いの言葉を吐きかける。
第2場 ディドーンの部屋
失意のディドーンはアンナとナルバルを呼び「あと数日だけでもカルタゴに留まるようにエネーを説得してほしい」と懇願する。そこに使者が駆け付け、トロイア人の一行がすでにイタリアに向け出航した旨を報告すると、ディドーンは錯乱し「軍を出せ、船を焼け、町を焼け!」と叫ぶ。正気を取り戻したディドーンは女王として誇り高く死ぬ決意をし、美しいアフリカの地に思いを馳せ、カルタゴへの別れを歌いあげる。
第3場 ディドーンの庭園
葬儀が始まりアンナは死に支度をするディドーンの髪を梳く。ディドーンはエネーの思い出の品を焼き尽くし「いつの日にか勇者ハンニバルが現れ復讐を遂げる」と絶唱すると、家臣、民衆の見守る中胸に剣を突き刺す。民衆はうろたえ女王の冥福を祈り、全員でトロイアへの復讐を誓う。しかし死にゆく女王ディドーンの目に過酷な運命が見える。ディドーンは最後の力を振り絞り「カルタゴは滅び、不滅のローマ!」と絶句し息絶える。幕
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