第2場/ヴァルターの家の客間
ルルは画家ヴァルターの妻となった。しかしルルを溺愛し、四六時中体を求めてくるヴァルターに、ルルは少々うんざりしている。ある日2人の元に、ルルのパトロンであったシェーン博士の婚約を知らせる手紙が届いた。ヴァルターが「あれ程の権力者が、正式な婚約に時間がかかったのは何故だろう?」と呟くが、ルルは知らん顔をしている。ヴァルターがルルを抱きしめようとすると呼び鈴が鳴るので、ヴァルターは美術商でも来たのかと思い扉を開けた。しかし年老いた物乞いがお金を無心しているだけだった。小銭を持ちあわせていないと戻ってきたヴァルターは「さすがにもう仕事にかからなければ..」とそのままアトリエへ入っていった。物乞いが老人だと聞き、ルルはハッとして玄関へ向かった。思った通りそこにはルルのよく知る人物、シゴルヒが立っている。シゴルヒは昔貧しく幼い娘だったルルを、情婦として働かせていた売春斡旋人だった。ルルはその時シェーン博士に引き取られ、彼の情婦として過ごしていたが、表向きは博士の知人女性の姪ということになっていた。ところが博士の妻が亡くなり彼に恋人ができると、ルルは妻の座に就きたいと望み始めたので、困った博士はルルに若い夫を宛がい、裏で援助をするようになった。ヴァルターの絵が、ルルとの結婚を境に注目を浴び始めたのもそのお陰である。
老人シゴルヒは部屋に入ってくるなり「お前の夫は大した奴じゃないな」と言い、ルルに金を用意するよう頼んだ。シゴルヒは今までもルルの父親を名乗り、ルルにお金の無心をしている。久しぶりにルルと呼ばれ、彼女は懐かしかった。シェーン博士にも夫たちにも、それぞれ違う名前で呼ばれていたからだ。その時再び呼び鈴が鳴ったので、シゴルヒはすごすごと裏口から出ていった。入ってきたのはシェーン博士だった。博士はシゴルヒの後ろ姿を見かけると「まだあんな父親と関わっていたのか!」と呆れ、お前もこれ以上私に関わるなと吐き捨てるように言った。博士はルルに婚約を邪魔しないよう釘を刺しに来たのだ。しかしルルは全く耳を貸さず「私は貴方だけのもの!」と言い張った。仕方なく博士はヴァルターと2人きりになりたいと言うと、彼に真実を全て打ち明け、妻を監督するよう頼むことにした。ヴァルターは自分の妻が多くの嘘をついている上に、幼い頃から博士の情婦だったと知り、ショックで言葉を失った。そして「妻と話がしたい..」と隣の部屋へと入っていった。暫くすると部屋から微かな呻き声が聞こえ、当のルルが他の部屋から出てきたので、博士は悪い予感がして隣の部屋の扉を開けようとした。扉には鍵が掛かっている。その時博士の息子アルヴァが、パリで革命が起きたと知らせにきたが、博士はそれどころではないと斧で扉を叩き壊す。中を覗き皆は息を呑んだ..。そこには自ら命を絶った血だらけのヴァルターが倒れていた。ルルはこんな所にはいられないと着替えにいき、アルヴァは母親が死んだ時にルルをもっと優遇していればと父親を責めた。警察に電話をする博士に、着替えから戻ってきたルルが「このことを号外にでもしたら?そして貴方は私と結婚する運命なのよ!」と言い、博士の頬に付いた血をそっと拭き取り微笑んだ。
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