第4幕
デズデモーナの寝室。寝巻き姿のデズデモーナは、エミーリアに髪を梳かせながら、「淋しい荒野に立つ柳よ、悲しむ女のように、頭を垂れている柳よ。死の柳は、私の花飾りとなる。小鳥も泣き、石さえも悲しみの心に閉ざされる」と、余りにも有名な「柳の歌」を歌う。そして引き続いて、聖母マリアの像にぬかずいて歌われる「アヴェ・マリア」になる。祈り終わると、デズデモーナは静かに床に就く。扉が開き、そこにはオテロが立っている。デズデモーナの寝姿をしばらく見た後、軽く3度キスをする。目を覚ました彼女に、「お祈りを済ませたか」と尋ね、「カッシオを愛しているのか」と訊く。激しく否定する彼女に、オテロは「あのハンケチを渡したのは」と問い質すが、彼女には身に覚えがない。せめて僅かの時間でもと猶予を願うが、彼が聞き入れるはずもなく、彼女のか細い首を締め付けてしまう。そこへエミーリアが駆け込んで来て、カッシオがロデリーゴを殺したと急を告げる。虫の息のデズデモーナが、私も無実の罪で死んで行きますというと、オテロは俺が殺したのだ、カッシオとの不義のゆえにと告げるので、驚いたエミーリアの人殺しという声に、カッシオ、ロドヴィーゴ、モンターノ、それにイヤーゴが、兵士たちとともに入って来る。そこでエミーリアから、イヤーゴがハンケチを奪ったこと、ロデリーゴが死に際にイヤーゴの奸計を告白したこと、そしてデズデモーナが潔白なことを聞いた一同は、逃げるイヤーゴを兵士に追わせる。すべてを悟ったオテロは、短剣で自分の胸を刺し、最後にデズデモーナに3度のキスをしてから、彼女の横たわっているベッドから床に転がり落ちて息絶える。部屋の一角で固唾を呑んでいた一同が十字を切るうちに幕が静かに下りる。
(C) 出谷 啓
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