第2幕
 短いが美しく劇的な間奏曲が奏されて、幕が上がる。道化芝居の準備が出来て、ペッペが調子はずれのラッパを吹き鳴らし、トニオは太鼓を叩く。そしてペッペは客席の椅子を並べ、ネッダは入場料を徴収する。そのとき客席のシルヴィオに、気をつけてと耳うちをする。やがて「開幕だ」の合唱で、幕が切って落とされる。舞台上ではコロンビーヌに扮したネッダが、人を待つ風情でそわそわしている。彼女は夫の不在をいいことに、恋人のアルレッキーノとの逢引を考えている。トニオが扮するタデオに、ご馳走を買いにやらせようとする。遠くの方からアルレッキーノが、マンドリンを弾きながら歌う、「セレナード」が聞こえて来る。買い物から帰って来たタデオは、コロンビーナに自分の熱い思いを訴えるが、彼女は勿論相手にもしない。するとペッペの扮するアルレッキーノが入って来て、タデオを無理矢理外につまみ出し、見張り番に立たせる。
 ディナーが始まり、ガヴォット調のリズムに乗って、二人は食事をしながらの二重唱、アルレッキーノはポケットから、怪しげな薬を取り出し、これをパリアッチョに飲ませて、ぐっすり眠っているあいだに逃げようと提案する。そのときタデオが、パリアッチョが帰って来たと告げるので、アルレッキーノは慌てて逃げ出す。ネッダは彼に、永遠にあなたのものよという。それを聞いたカニオの扮するパリアッチョは、あの時と同じセリフだと叫んで逆上する。だがそこで気を取り直したパリアッチョは、コロンビーナに「あの男は誰だ」と詰問する。彼女は戸の陰から出て来たタデオを指差し、この人よと答えるが、パリアッチョは嘘だ、あの男の名前をいえと強く迫る。もうカニオには、芝居と現実の違いが分からなくなっている。ここで最も有名なパリアッチョのアリア、「もう道化師じゃない」がうたわれる。
 観客はまだカニオが芝居をしていると思いこみ、うまいものだとか、素晴らしい、真に迫っているじゃないかといって、喜んで喝采している。カニオはさらに、ネッダに迫る。はやく、名をいうんだと。さすがにこうなると彼女も自分の役柄を忘れ、逆切れして啖呵を切ってしまう。ペッペが仲裁に入ろうとするが、トニオがそれを止める。観客もこれは、本当の喧嘩らしいと騒ぎ始める。とうとうカニオは、ナイフを手にする。ネッダは「シルヴィオ、助けて」と叫ぶ。客席からシルヴィオが飛び出すが、一瞬ナイフはネッダの胸をえぐり、次いでシルヴィオをも刺す。二人は倒され、観客は総立ちになる。返り血を一杯に浴びたカニオは、手にしたナイフを落として茫然自失。彼は力なく口上をいう。「皆さん、喜劇はこれで終わりです。」と。(幕)(C)出谷 啓
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