第3幕
第1場 森の空き地
荒々しいブラスの響きが刻まれ、森の空気が緊張する。そこに行商人ハラシュタが登場し、密猟の見回りをする森番に会う。ハラシュタは自慢げにテリンカと結婚する事になったと挨拶し「大地に誓って密猟はしていないが、向こうで野うさぎの死骸を見つけた」と話す。今なおビストロウシュカを狙う森番は野うさぎの死骸に罠をしかける。森番とハラシュタが去ると、早速子狐達を連れてビストロウシュカがやって来る。しかしすぐに罠を見破り「近づいては駄目よ!」と子供達を追い払う。ビストロウシュカと夫の狐は仲良く「我々は子供を何匹作ったかな?」と歌い、5月になったら次の子作りをしようと微笑みあう。そんな甘いひと時を断ち切るように、ハラシュタの「テリンカのためにマフを作ろう」と歌う声が聞こえてくる。ビストロウシュカは「狐というだけで命を狙われるなんて!」と憤慨しながら逃げ回り、ハラシュタを撒いてしまう。そして置いてあったハラシュタの背負い籠の中の鳥を、子狐と一緒に食い荒らす。戻ってきたハラシュタは怒り、ビストロウシュカを撃ち殺す。子狐達は不思議そうに死んだ母狐を取り囲むが、やがて森の奥に消えていく。
第2場 居酒屋
森に夜が訪れる。ビストロウシュカの死を呑みこむかのように、生き物達の濃密な生への営みが表現される。居酒屋では森番と校長が二人で酒を酌み交わしている。常連だった牧師は新しい赴任先に赴いてしまった。テレンカの結婚を知り「もう、駄目だ」と傷心の校長を、森番は何とか元気付けようとするがうまくいかない。森番も年をとってしまったと元気を失くし、家に帰ることにする。
第3場 森の中
家路の途中、森番は結婚した翌日に妻と二人で行ったキノコ採りを思い出す。「愛し合うのに夢中で、キノコをたくさん潰してしまった」と若く楽しかった日々を歌う。帰らぬ昔を思い出して少し顔を歪め、横になって休もうとする。すると森に日没の光りが射し込み、はっとしたように起き上がる。その顔は希望に満ちている。森番は「私は日没の強い光が好きだ。その時森は驚くほど美しく、愛がよみがえる。人々は天から恵まれた幸せに包まれる。」と力強く歌い上げる。満足げな様子でもう一度横になるが、生き物達の気配にまた起きだす。ビストロウシュカの子供があの日と同じように青トンボの踊りに見とれている。蛙も木陰から同じように現れる。森番は「あの時の冷たい奴(蛙)だな」と話しかける。すると蛙は「あれは僕のお祖父さん、あなたの話は何度も聞かされたよ」と話す。森番は生き物達に囲まれ、巡る命の力をかみしめる。日没の光で森は明るく輝いている。〈幕〉
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